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耳に残るは君の歌声/The Man who cried '00(英・仏)

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ずいぶん前にTVをつけたらこの映画の途中だった。
暗くて重くて退屈そうな映画だなと思いつつ、
不思議と引き込まれて、いつかちゃんと観ようと心に残っていたのだ。

壮大で感動的な大作にしようと思えばできる題材を
そっけないくらい淡々と描いているところが◎

激動の時代を描いているくせにあまりにも説明不足だし
展開があっけなくセリフも極端に少ない。
美しい映像と音楽に身を委ねていつしか引き込まれていくが、
ユダヤ人やロマに対する人種差別など
ある程度予備知識がないとチンプンカンプンだろう。

1920年代のロシアから物語は始まる。
貧しい村の男が、年老いた母と幼い娘を残してアメリカへ出稼ぎに行く。
(妻がいない理由など一切説明はなし。
男が娘の父親にしては老けているので最初は祖父かと思った)

ほどなくして村は何者かの襲撃を受け、祖母は幼い孫娘だけをなんとか脱出させる。
(ここも一切説明なし。娘と一緒に村を出た若者2人がどうなったのかも不明)
娘は船でイギリスに着き、英国名を与えられて英国人家庭の養女になる。
養父母にも心を開かず、学校では英語も喋れないロマの娘だといじめられ、
唯一、美しい歌声だけを心の拠り所とする娘。

この娘がクリスティーナ・リッチ。暗く悲しい運命を背負った表情がすごくいい!
歌声自慢の彼女はオーディションを受け、ショーガールとしてパリに行く。
野心満々の華やかな美人、ケイト・ブランシェットとルームメイトになり、
オペラ劇団の一員でロマのジョニー・デップと恋仲になる。
ここから時代は第二次世界大戦に突入。
ユダヤ人である娘はパリと恋人を捨ててアメリカへ。
そこで成功した父親と再会する。(この父の成功っぷりにびっくり!)
ものすごい激動の波に飲まれた波乱万丈の人生だが、
主人公であるクリスティーナ・リッチの表情も映画もあくまでも淡々としたまま終わる。

個人的には再会後、父娘関係がどうなるのか
(法的に親子関係の証明とか財産の相続権とか問題山積みみたいだし)
彼女がアメリカでどんな人生を送るのかすごく気になった。


クリスティーナ・リッチはそんなに好きな女優じゃないが、
この作品では彼女の冴え冴えとした陶器の人形みたいな顔にくぎづけ。
暗い宿命を受け入れ、悟りきったような表情がすばらしい。
そして、対照的なケイト・ブランシェットの美しさ&存在感もいい。
ケイトは現代物もいいが、クラシックなメイクや衣装が映えると思う。
ジョニー・デップはまさにハマり役で、彼以外にこの役は考えられない。
特に新鮮味は感じないものの安心して観ていられた。


'08 8 WOWOW ★★★★☆
監督:サリー・ポッター
出演:クリスティーナ・リッチ、ケイト・ブランシェット
    ジョニー・デップ、ジョン・タトゥーロ

by gloria-x | 2008-08-24 17:11 | 映画レビュー