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マイ・グランパパ ピカソGrand-pere / マリーナ・ピカソ    小学館

ピカソと最初の妻・オルガの間の息子ポール、
その娘・マリーナが祖父ピカソについて書いたノンフィクション。

甘いムードのタイトルから受ける印象を大きく裏切って残酷で辛い物語である。
「読者はアンチ・ピカソの陣営にはからずも与してしまうかもしれない」
と翻訳者も危惧しているように、わたしもピカソの大ファンだが、
彼の人間性に疑問を覚えずにはいられなかった。

最初の息子であるポールを幼い頃から「お前は無能だ」と徹底して貶め、
息子が大人になってからは専属のお抱え運転手として、
妻とふたりの子供を養うことも難しいわずかな週給で縛りつけていたピカソ。
しかも給料をもらいにピカソの家を訪れるたびに
ポールと幼い兄妹は想像を超える屈辱を味わわされる。
それはピカソが帝王として君臨するための、天才ゆえの人間的欠落であり、
当時ピカソの妻だったジャクリーヌの策略だったとはいえ、
ポールと彼の子供、パブリートとマリーナの子供時代は悲惨すぎる。

ピカソ一族に名をつらねることに過大な期待を抱いてポールと結婚し、
ことごとく裏切られて精神を病んだミエンヌも不幸な女性だが、
ふたりの子供が最大の犠牲者だ。
彼らはたまたまピカソの孫として生まれたせいで残酷な運命に翻弄されるが、
少なくとも両親が健全な家庭を築いていればここまで不幸ではなかったはず。

ピカソという偉大な天才のケースだから特殊とはいえ、
親という存在が、限りない可能性を秘めた健康で純粋な子供の人生を
あっけなく壊すことができるという真実に怒りを覚える。

'05 2 ★★★★☆

by Gloria-x | 2005-02-16 00:07 | ブックレビュー