携帯の無い青春/酒井順子
1966年生まれ、バブル期に青春を送った著者が
子供時代~新社会人時代の流行を振り返りながら「あの時代」を綴る。
ピンクレディー、女子大生ブーム、ユーミン、オリーブ、
竹の子族、ドリフと欽ちゃん、金八先生、ぶりっ子、ディスコ、
カフェバー、YMO、ヘタウマ、ワンレンetc・・・
各章のタイトルを見ただけで当時を鮮烈に思い出す人も多いだろう。
わたしもユーミンの歌詞に自身の恋愛を勝手にオーバーラップさせたり、
カフェバーでカクテルなど飲んで、大人になった気分に浸ったり、
YMOに代表されるテクノがかかるようになって
なんとなくディスコから足が遠のいた、など
当時の懐かしくも、こっ恥ずかしい数々の思い出が蘇った。
いや~絶対過去には戻りたくないですねー。
子供の頃は、懐メロ番組の存在意義が全くわかりませんでした。
が、今になってみると、たまに「懐かしい」という感覚にドップリ浸る時間は
大人にとって必要なものなのだということがよく理解できる。(あとがきより)
単に流行や風俗を取り上げただけではなく、
女子大生ブーム、アメカジ、ワンレンなどの章で
女性の生き方のパターンを見事に分析しているのは
「負け犬の遠吠え」の著者ならでは。
酒井順子は東京都内に生まれ育ち、
中高一貫の私立女子高(しかも私服)出身。
中学時代から渋谷や原宿に遊びに行き、
高校時代にはオリーブ誌上でエッセイを連載していたという経歴。
著者が本作の中で触れている林真理子も、
初期には同じ時代を振り返ったエッセイをよく書いていたが、
ひと世代違うとはいえ、
同じ時代や流行に対する視点や姿勢がまったく違う。
地方出身者の林真理子が遠くから憧れ、
おずおずと近づいて体験していったものが
酒井順子にとっては日常の延長なのだ。
この差も、生まれた時から携帯電話やTDLがあった世代と
著者世代の感覚の差に等しいのでは?
'10 2 ★★★★☆
by gloria-x | 2010-02-19 13:49 | ブックレビュー