カテゴリ:ブックレビュー( 184 )

ゼロ、ハチ、ゼロ、ナナ。/辻村深月

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「グロリアさんなら主人公の気持ちに共感されるのでは」と
まりりんさんがお勧めしてくださった一冊。

いろんな意味で、
まさにわたしのための小説だった。


まりりんさん鋭い!ありがとうございました!

都会でフリーライターをしながら幸せな結婚も手に入れたみずほと、
地元で契約社員として働き、両親と同居する未婚のチエミ。
幼なじみ2人の人生は少しずつ隔たって30歳という岐路を迎え、
共通の話題もなくなっていた。
そして、あの殺人事件が起きる。


酒井順子著「負け犬の遠吠え」を読んだ時に覚えた違和感が
著者がこの小説を書いたきっかけだという。
その「違和感」はわたしが同書を読んで抱いたものと同じで、
それが見事に小説として昇華されている。
(参考文献の小倉千加子著「結婚の条件」もドンピシャ!)

みずほの地元の友人たちのキャラクターと、
彼女たちの置かれた環境、ライフスタイルが
どうしようもなく息苦しくて、読みながらしんどくなるほどだった。
地方の独身30代ってほんとうにあんな感じなのだろうか・・・?

著者自身が「みずほとチエミはどちらがわたしでもおかしくなかった」と
語っているように、わたしも読んでいて辛くなるほど両者に共感した。

~結婚、仕事、家族、恋人、学歴、出産。
 社会の呪縛は、娘たちを捕らえて放さない~

帯のコピーにすべてが集約されている。
そして、母親と娘のどうしようもなく不幸でねじれた関係。

どんな風に振る舞っても、娘は許されず、
母の望む正解は出せないのだと思っていた。
だけど、正解を与えないのは私も一緒だ。
私は母を許してはいない。
それでも、彼女は一生、私の母だ。
逃げられないし、逃げるつもりもない。
一生、いい思い出も悪感情も、引きずりながら
向き合わせて生きていく。



みずほのこの独白は、まさしく現在の年齢になったわたしの心境。

ラストでわかるタイトルの意味が重い。

'10 4 ★★★★★
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by gloria-x | 2010-04-10 11:49 | ブックレビュー

ファミリーポートレイト/桜庭一樹

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好き嫌いで言えば「嫌い」
しかし、読み応えはあった。ただし第一部だけ。
でも著者が書きたかったのは第二部なのだろう。
第一部はいわば「客寄せ」

ママの名前は、マコ。マコの娘は、コマコ。
あなたとは、この世の果てまでいっしょよ。
呪いのように。親子だもの。
若く、美しく、残酷な母を守るために、
マコの「小さな神」として産み落とされたコマコの
5歳から34歳を描く長編。


濃密な母娘の放浪の旅を描く第一部は
嫌悪感を覚えながらもどうしようもなく引き込まれて一気に読破。
母マコのキャラクターが強烈で、ネガティヴ方向に魅力的。
それとは対極的なコマコの精神的大人度が健気だ。
「葬式婚礼」など架空の風習のアイデアも秀逸!

「すこぅし」「くったりと」など著者独特の言葉使いは
官能的で効果的だが、「すこぅし」は乱発しすぎて後半鼻につく。

怒涛のような第一部から第二部に入ると、突然パワーダウンして退屈になる。
近未来の荒廃都市のような高校生活を描いた部分は
ダラダラ長いだけで自己満足的だし、
コマコが成長し、作家になってからの部分は
著者自身の魂の叫びの押し付けという感じでうっとうしかった。

成長後のコマコ役は
南海キャンディーズのしずちゃんを勝手にキャスティング。



'10 3 ★★★☆☆
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by gloria-x | 2010-04-07 12:28 | ブックレビュー

走らなあかん、夜明けまで/大沢在昌

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東京から出張で大阪へやってきたサラリーマン坂田勇吉は
到着早々、新製品サンプルの入ったアタッシェケースを盗まれてしまう。
右も左もわからない大阪の街を男を追って走る坂田。
いつの間にか鞄はなぜかヤクザの手に渡り、
偶然知り合ったホステスが追跡劇に加わる。
坂田は明日の会議までに鞄を取り戻せるのか?

miffyさんおすすめの一冊。おもしろかった~!!!

主人公は箱根より西に足を踏み入れたことがないという設定。
大学時代に地方出身の友人たちと話すにつれ、
生粋の東京人であることに漠然と優越感を持っている反面、
東京に対抗心を持つ大阪で敵意の目にさらされるのでは?
とナーバスになったりも(笑)

東京人・坂田の目を通して描写される大阪が外国みたいで新鮮。
しかもキタやミナミなどメジャーな場所ではなく、
福島、新世界から大国町、阿倍野から近鉄線に乗って藤井寺、
鶴橋、住之江、フェリーターミナルなどコアでディープな場所ばかり!
街や交通機関の描写が正確で(方角や位置関係)
大阪人のわたしが読んでもまったく違和感がない。

大阪弁については、ヤクザのセリフはいいとして
ホステス真弓の大阪弁はやりすぎ&ガラ悪すぎ!

「ほな、うち、行くわ」
「ごっとさん」「知っとる?」なんて
言う女子いませんって(笑)


ちなみにわたし的には
「じゃあ、あたし、行くね」「ごちそうさまー」「知ってる?」ですが、
文字だけだと大阪弁に見えませんね。

大阪人同士でも、初対面だとあんなに大阪弁全開で喋らないし・・・
特に相手が東京から来た人なら
イントネーションは関西風でも標準語で喋るのが常識。
(ですよね?大阪人のみなさん)

大阪人にとってナチュラルな会話を
そのまま文字にすると
大阪弁のセリフには見えないからデフォルメするんでしょうね


大阪弁については監修者がついたらしいが、
「ひっかけ橋」を「ナンパ橋」と大阪人は言わないと思うし、
シンナーは作中「ぼけ」になってるけど
わたしは「アンパン」という隠語しか聞いたことがなかった。
地域や時代によって変わるのかも?
個人的には鶴橋のケンちゃんのセリフが最も自然で魅力的だった。

'10 3 ★★★★☆
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by gloria-x | 2010-03-28 16:55 | ブックレビュー

私のこと、好きだった?/林 真理子

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かつて人気アナウンサーだった美季子は42歳になり、
若い女子アナたちの管理職としてミズホテレビで働いている。
恋愛にも仕事にも全力投球してきた美季子だが、
最近は画面に出る仕事がめっきり減り、
自分を取り巻く環境が若い頃とは確実に変わっていることを実感していた。

ヒロインはTV局、大学時代からの親友(♂)は大手出版社勤務。
華やかな業界を舞台に女性心理や恋愛、
そこに渦巻く人間模様を描かせたら
林真理子の右に出る者はいないと思う。
デビュー作からずっと読み続けているけど、
多作ゆえか期待ハズレな作品もあるが、これは当たり!
やっぱりお金持ちのお嬢様とか、裕福な家庭の主婦よりも
バリバリ仕事している女性をヒロインにした作品のほうが
本領発揮という感じで読みごたえがある。

女子アナ嫌いのわたしの友人がこう言っていた。
「何がイヤって、女子アナになりたいと思うその心理がイヤ」
作中、同じようなセリフが出てきて思わず笑った。
「自分がうんと美人だってことを知ってる女じゃなきゃ
アナウンサーになろうなんて思わないわ」

ほんとですねー。
容姿だけじゃなく、一流大卒という学歴も必要だし、
女子アナっていいとこのお嬢さんが多いような気がするし・・・
わたしにすれば、女子アナになろうと屈託なく思えるような、
すくすく育った人格がうらやましいですなぁ。


'10 3 ★★★★☆
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by gloria-x | 2010-03-24 21:55 | ブックレビュー

平成大家族/女中譚  /中島京子

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おもしろかった~!
あらすじというか、内容説明ではこのおもしろさは伝わらないけど・・・

歯科医を引退した家長、その妻と妻の老母、
30歳を過ぎて15年以上ひきこもりの長男が暮らす緋田家。
そこへ、夫が事業に失敗した長女一家が転がり込む。
さらに、編集者の次女が離婚して出戻ってくる。
次女は元夫ではなく、年下の売れない若手芸人の子供を妊娠していた。
長女一家の一人息子は親が自己破産して学費が払えず
難関私立校から区立中学へ転校するハメに・・・。

突然人口過密状態になった緋田家のメンバーそれぞれが
抱える問題、巻き起こす事件で綴る連作ユーモア小説。

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林芙美子、吉屋信子、永井荷風による昭和初期の女中小説のトリビュート。
これはまた独特の風味。

いろんな作風が書ける人なんですねー、すごいなぁ中島京子。
今後も楽しみ!

'10 3 ★★★★★
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by gloria-x | 2010-03-22 23:51 | ブックレビュー

エ / ン / ジ / ン / 中島京子

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エンジンという片仮名の字面だけを見ると、車などの発動機を連想するが、
「あなたのお父さんはたいへんなエンジンカだったのよ。
厭世家ともいうわね、たいへんな人嫌いだった」と
母親に聞かされて育った少女ミライは、鏡を意識する年頃になり、
自分の顔を見て「エンジン」が漢字だったことに気づく。

おもしろくて不思議な小説だった。
'70年代、ヘンリー・ダーガー、ウディ・アレン、
特撮ヒーロー番組、アメリカの反戦運動etc・・・
不思議なオープニングから予想外に話が広がっていくおもしろさ。
登場人物誰もがかなり個性的だが、嫌味がなく好感がもてる。
あらすじを説明しても、そのおもしろさは伝わらないし、
おもしろいか否か、読む人を選ぶような小説だと思う。


中島京子の著書は、斉藤美奈子氏が書評集の中で絶賛していた
「ツアー1989」というのを読んだことがある。

~1989年の香港ツアーで一人の青年が消えた。
そして、彼のことは同じツアーに参加した人々の記憶からも欠落していた。
15年後、彼の行方を追う駆け出しライターは、
当時流行していた「迷子つきツアー」という奇妙な旅に行き着くが~

「おもしろそう!」と思ったものの、やや期待ハズレだったのだが、
図書館でふと手に取った本書は楽しめた。
日本近代文学史上に輝く田山花袋の『蒲団』をみごとに打ち直したという
「FUTON」も読んでみようと思う。

'10 3 ★★★★★
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by gloria-x | 2010-03-07 16:09 | ブックレビュー

スカーペッタ SCARPETTA/パトリシア・コーンウェル

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第一作目からシリーズの翻訳を手がけてこられた相原真理子さんのご冥福をお祈りします。
訃報は今年1月29日、この最新作出版は'09年12月。
ということはもともとこの作品は翻訳予定ではなかった?
相原さんの翻訳文体がとても好きだったので本当に残念です。

*************


待望の(毎回書いてる気がする)最新作だが、出版サイクルが長いので前作までの経緯をすっかり忘れてしまうのが難点。
おおまかな出来事とか、人間関係のポイントなど「前作までのおさらい」を付けてくれたら、もっとスムーズにストーリーに入り込めると思うんだけどなぁ・・・




とはいえ、シリーズとしては一時の低迷期をやっと抜け出したように思える。
登場人物たちの人生も新たなステージを迎えた感じで、今後が楽しみ。
マリーノの復帰が嬉しい!

上巻はややまどろっこしく感じるが、
下巻の急展開と怒涛のクライマックスは圧巻!
描写が映像的で、ラストも映画のような味わいがあってよかった。

'10 2 ★★★★☆
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by gloria-x | 2010-03-01 14:09 | ブックレビュー

PEACE/みうらじゅん

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みうらじゅんの著書はほとんど読んでいる。
読書中、わたしは常にプッと吹き出したり、クスクス笑ったり、
時にはお腹を抱え、涙を流して爆笑したり・・・
ほんと、健康にいい本だと思う。

彼はネーミングの天才だと思うが、
この本の中でもハッとするような提案をしていた。

***********************
人はネーミングってやつに踊らされやすい。

「第一次世界大戦」「第二次世界大戦」なんてネーミングにするから
「13日の金曜日」シリーズのように
「第三」「第四」も起こって当然という感じがする。

だから「世界大戦ファイナル」
と変更したほうがいい。


「恐怖!大量無差別虐殺!人類の愚かさ爆発!神も仏も匙を投げた!」
という副題もつけて・・・。ただし
「世界大戦 NEW BEGINNING」などという卑怯なタイトルで
一儲けしようとする商法もあるのであなどれない。

'10 2 ★★★☆☆
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by gloria-x | 2010-02-28 13:42 | ブックレビュー

ジュテーム からだ・肉体・からだ/鎌田敏夫

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鎌田敏夫といえばドラマ史に残るヒット作を数多く生んだ脚本家。
わたしも「男女7人夏物語」「29歳のクリスマス」にはハマったなぁ・・・。
脚本家イメージが強いが、小説もいい。

高校卒業後、雑貨店で働くユカは
街で美しい大人の女性に声をかけられる。
それは高級コールガールのスカウトだった。
純粋に人間の「からだ」が好きで関心の強いユカは
愛や心を伴わないセックスで自分の体がどう反応するのか
興味を覚え、実験と観察のためにその仕事を始める。
そして、コールガールの同僚として
中学の同級生で自傷癖のあったナカモトと再会する。

1937年生まれの男性が書いたとは信じられない!
20代前半の女性作家の作品と言っても通用するのでは?

ユカとナカモトのモノローグで進行するのだが、
どっちの女の子も同性の目から見て好感が持てるし
ほとんど違和感のないキャラクター設定である。

男性作家の描く女性像は往々にして
「こんな女いないって!」
「この女、同性のともだちいないだろうなー」
と思わせるヒロインが多いのだが(代表はW辺J一氏)
鎌田敏夫のリアリズムにはいつもうならされる。
(実際に登場人物のような女性がいるかどうかは別として)
リサーチや取材を丹念にしている成果だろうけれど、
それを小説にする才能、時代&言語感覚は驚異的!
さすが時代を代表するヒットドラマを書いてきた人だ。

「ジュテーム ~わたしはけもの~」というタイトルで
ドラマ化されBSフジで放送されたらしい。(ドラマは未見)

'10 2 ★★★☆☆
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by gloria-x | 2010-02-25 13:14 | ブックレビュー

携帯の無い青春/酒井順子

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1966年生まれ、バブル期に青春を送った著者が
子供時代~新社会人時代の流行を振り返りながら「あの時代」を綴る。

ピンクレディー、女子大生ブーム、ユーミン、オリーブ、
竹の子族、ドリフと欽ちゃん、金八先生、ぶりっ子、ディスコ、
カフェバー、YMO、ヘタウマ、ワンレンetc・・・


各章のタイトルを見ただけで当時を鮮烈に思い出す人も多いだろう。

わたしもユーミンの歌詞に自身の恋愛を勝手にオーバーラップさせたり、
カフェバーでカクテルなど飲んで、大人になった気分に浸ったり、
YMOに代表されるテクノがかかるようになって
なんとなくディスコから足が遠のいた、など
当時の懐かしくも、こっ恥ずかしい数々の思い出が蘇った。
いや~絶対過去には戻りたくないですねー。

子供の頃は、懐メロ番組の存在意義が全くわかりませんでした。
が、今になってみると、たまに「懐かしい」という感覚にドップリ浸る時間は
大人にとって必要なものなのだということがよく理解できる。(あとがきより)


単に流行や風俗を取り上げただけではなく、
女子大生ブーム、アメカジ、ワンレンなどの章で
女性の生き方のパターンを見事に分析しているのは
負け犬の遠吠えの著者ならでは。

酒井順子は東京都内に生まれ育ち、
中高一貫の私立女子高(しかも私服)出身。
中学時代から渋谷や原宿に遊びに行き、
高校時代にはオリーブ誌上でエッセイを連載していたという経歴。

著者が本作の中で触れている林真理子も、
初期には同じ時代を振り返ったエッセイをよく書いていたが、
ひと世代違うとはいえ、
同じ時代や流行に対する視点や姿勢がまったく違う。
地方出身者の林真理子が遠くから憧れ、
おずおずと近づいて体験していったものが
酒井順子にとっては日常の延長なのだ。
この差も、生まれた時から携帯電話やTDLがあった世代と
著者世代の感覚の差に等しいのでは?

'10 2 ★★★★☆
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by gloria-x | 2010-02-19 13:49 | ブックレビュー