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金平糖の降るところ/ 江國香織

登場人物の誰も好きになれないが、バックグラウンドには惹かれる。読みごたえ満点!

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日系アルゼンチン人としてブエノスアイレス近郊の町で生まれ育った
佐和子(カリーナ)と十和子(ミカエラ)姉妹は
少女の頃からボーイフレンドを共有することを2人だけのルールとしていた。
留学生として日本を訪れた姉妹が出会ったのは
容姿に恵まれて屈託なく育ち、誰からも好かれる達哉。
達哉に求愛された佐和子は初めて姉妹のルールを破り
達哉を共有することを拒否して彼と結婚。
一方、ミカエラは父親のわからない子供を妊娠して帰国。
アルゼンチンでシングルマザーとなる。
そして20年後・・・・


姉の佐和子は正統派美人。
妹ミカエラはファニーフェイスだが奔放で魅力的。

姉・佐和子は江國香織の小説によく出てくるタイプの女性だ。
植物的な美人で、上品なお嬢様タイプのくせに
異性関係は意外に奔放というか常識ハズレだったりする。

妹・ミカエラは佐和子との対比としてシズル感のあるキャラクターだが
姉の夫(実際は姉そのもの)への異常な執着といい、
誰が父親かもわからない子供を
平気で産み育てる生き方といい、シンパシー度はゼロ。

そして、誰もが振り返るそんな美しい姉妹を両腕に抱いて
'80年代のディスコで顔パスだった男、達哉。
容姿に恵まれ、誰からも好かれ、体を鍛えるのが趣味で
常に自信に満ち溢れている。
20年後の現在は、東京都内で4軒の飲食店を経営し
「遅れてきた一人バブル」と揶揄されるほど大成功。
従業員とは、かつて自分が主将だった頃の
ラグビー部のメンバーとのような関係を築いている。

美人の妻と豪邸に住み、都内には自分専用のマンションを持ち
愛車はマセラッティ(妻はベンツとルノー)
常にガールフレンドが数名いて、その関係は妻も黙認・・・・

って、こんな男、生理的に大っ嫌い!!!!

でも、佐和子みたいな身分にはなりたいわ~(;^_^A

姉妹の独特の「共犯関係」みたいなものもまったく共感を覚えないし
(ていうか、こんな姉妹いるとしたらお目にかかりたいわー)
ミカエラの娘のキャラもよくわからん。
それでいえば、佐和子の逃避行の相手もどこがいいのかさっぱり?
とにかく登場人物は誰ひとりとして好きになれないのだが
彼らのバックグラウンドは羨ましいし、
日本・アルゼンチン、どちらの描写も魅力的で心惹かれるのだ。

↓の一文には激しく共感した。

佐和子はこれまで、若い人をうらやましいと思ったことが一度もなかった。
若いというのは子供ということなのだし、
若さを失うのを恐れるというのは、見苦しいと思っていた。


わたしは自分自身が子供の頃、若い頃から
「若い=未熟=恥ずかしい」と思っていて
今の若いコみたいに「若い=最強」
若いというだけで武器になるなんて
これっぽっちも思ったことがなかった。
だから小学生くらいから、早く大人になりたい、
大人になって成熟して自信満々になりたいと思っていた。

だからかもしれないが
「若い頃に戻りたい」なんて一度も思ったことがない。
ていうか、逆に戻されたら罰ゲームである。


戻ってリセットしてやり直せるなら別だけど。

他人から見てどうかは知らんが
わたしは常に「今が自己ベスト」


これって言い換えれば「お幸せな人」なんでしょうね(-_-;



'11 12 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2011-12-23 23:57 | ブックレビュー

イグアナの娘/ 萩尾望都

この歳になって、やっと読む勇気が出ました

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ある夫婦に可愛い女の赤ちゃんが誕生。
ところが、なぜか母親の目には
娘が醜いイグアナに見えて、どうしても愛することができない。
「神様、お願い!こんなのじゃなくて普通の女の子をあたしに授けて!」
願いは叶い、次に生まれた娘は人間に見える。
「こんな日を夢見ていたのよ」と母親は次女を溺愛。
次女が何をしても「かわいい、かわいい♪」
一方、長女のことは「ブサイクなくせに」「可愛げがない」と徹底的に目の敵。
母親から嫌われ憎まれて育ったせいなのか
長女自身の目にも自分は醜いイグアナに見えていた。
やがて長女は恋をし、結婚して女の子を産むが
どことなく自分の母親に似た娘を可愛いとは思えないのだった。


この作品のことは雑誌発表当時から知っていたが、どうしても読めなかった。
ものすごく読みたいのに、怖くて読めなかったのだ。

自分に重ね合わせ、感情移入しすぎて
辛くなるのがわかっていたからである。


わたしの場合、妹と差別されて云々ではなく
とにかく母親がわたしのすべてが気に入らなかったらしく
容姿、趣味、一挙手一投足に至るまで
「可愛げがない」「ひねくれてる」「どうしてそうなの?」と
ことごとく目の敵にされたのです。
きっと母の目にもわたしは醜いブタか何かに映ってたんだろうな~
(ようやく冷静にそう思えるくらいには成長した)

ああ、タイムマシンで母親に会いに行って
「ほめて育てる」「長所を伸ばす」って言葉を教えてやりたいわー!

萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母を読んで
萩尾さん自身、両親(特に母親)との間に深い確執があることを知った。
彼女の作品には親と子の確執、アダルトチルドレンを扱った物も多いが
舞台が外国だったり、母親と息子だったり・・・
現代の日本という設定で母娘の確執を真正面から描いたのは
「イグアナの娘」が初めてである。

萩尾さんによると
「日本物を描くとき、家族の問題を描くとどうしても親がからんでくる。
すると、描きたくない!となってしまう」長年そうだったのが
「残酷な神が支配する」を描いてから、やっと親と距離を取れるようになり
日本を舞台にしたり、親の世代が描けるようになったのだとか。

この本には萩尾さんのご両親へのインタビューも載っているが
お母様は「確執なんてあったかしら?」的なというか
娘である萩尾さんが長年苦しんでいることすら気にもとめていない風というか
ある意味あっぱれというか、うまく言えないが
親という生き物はこうなんだろうな~と感慨深かった。

この天才にしてこうなのだから
わたしが長年怖くて「イグアナの娘」を読めなかったのも当然だ。
実際に読んでみると、予想外にコミカルなタッチで
構えていたより楽に読めた。(短編だったのも意外!)
内容もスタンダードな心理学的公式なのでわかりやすい。

それにしても、主人公リカはあんなに母親に嫌われて育ったのに
結婚すると当然のように子供を作るのがすごいと思う一方、
わたしにはちょっと共感できない。

わたしは子供時代、すでに親子関係というものに
ヘトヘトに疲れきって満身創痍だったので
「大人になってやっと解放されたとしても
子供を産んだら、この果てしない戦いをまた繰り返すのか~
そんなの絶対イヤだ!そうだ、子供なんか産まないことにしよう」
と強く強く決心したのである。


実は「イグアナの娘」本編よりも、Amazonで読んだ某読者のレビューの一文が鋭く印象に残った。

~大塚英志氏は「萩尾望都はなぜいつまでも“母”を許さないのだろう」と書いていた。
  答えは簡単だ。萩尾さん自身が「母親」にならなかったからだ~



'11 9 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2011-10-05 18:23 | ブックレビュー

萩尾望都 少女マンガ界の偉大なる母 / 文藝別冊 

永久保存のお宝!どっぷり読みふけりたい欲が再燃!

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萩尾望都作品と初めて出会ったのは小学校高学年。
以来、中学・高校と夢中になって読みふけった。
(蛇足ながら漫画家志望だったわたしは自分の作品にも多大な影響を受けた)

なんといっても「ポーの一族」シリーズがいちばん好き。
「トーマの心臓」も同率一位ほど好きなのだが
「ポー」はシリーズ全体で作品世界のスケールが壮大&深遠かつ
メイン長編以外の作品もそのまま映画にできそうな完成度で
何度繰り返し読んでも世界に引き込まれてしまう。
(余談だが、アン・ライス「インタビュー・ウィズ・バンパイア」は
絶対「ポー」の盗作、盗作と言って悪けりゃインスパイア作品だと思う)

特に好きなのは「小鳥の巣」「エディス」
「ランプトンは語る」「ホームズの帽子」

キャラクターで好きなのは「メリーベルと銀のバラ」オズワルド・エヴァンズ

「トーマの心臓」で好きなキャラはもちろんオスカー
なのでスピンオフ作品「訪問者」には狂喜した♪

レイ・ブラッドベリの作品を漫画化した作品群も好きだし
「アメリカン・パイ」「マリーン」「11人いる!」も忘れがたい。
特に「マリーン」は読んだ当時もすごいと思ったが
後年、結婚してから時を遡って共感度がハンパじゃない。

というのも、恥ずかしながらわたしは常々
「タイムマシーンで夫の幼少期や少年期に会いに行きたい!
直に接するのがNGなら陰からひっそりとでもいいから生でその姿を見たい!」

と妄想というか熱望していて、それを思う度に
あらためて「マリーン」という作品の凄さを痛感するのだ。

このムックで初めて知って驚愕した事実。
「ポーの一族」執筆当時
萩尾望都は22~23歳だったなんて!

なんであんなに成熟&老成した世界を描けたんだろう!?

それほどハマった萩尾作品だけど
「百億の昼と千億の夜」あたりでちょっとついていけなくなり
その後、絵のタッチや作風が変わっていったのと並行して
わたし自身の実人生が波乱万丈になっていったこともあり長らく離れていた。
(たまに昔の作品を読み返すくらい)

そして今、またまた萩尾作品読みふけりたい欲が出てきて
未読だった「残酷な神が支配する」全10巻Amazonでオーダーしちゃいました~♪



'11 8 ★★★★★
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by Gloria-x | 2011-08-30 23:37 | ブックレビュー

死ねばいいのに / 京極夏彦

京極ファンなら「これ一作で判断しないで」と言うかもしれないけど・・・

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実は京極夏彦を読むのはこれが初めて。
他の作品を読んでいないのでわからないけど
京極氏の作品群で、これはメインストリームじゃないのだと思う。
だからファンの方には「これ一作で判断しないで」と言われるかもしれない。
だけど、たぶんコレが最初で最後になりそう・・・

死んだ女のことを教えてくれ、
と無礼な若い男が突然現れて尋ねる。
男の訪問を受けた6人の男女は
戸惑い、時に憤り、死んだ女のことよりも自分のことを喋り始める。
彼らはいったい彼女の何を知っていたというのか。


既に死んだ人物について複数の人物が語り、
その証言で人物像が浮かび上がる・・・・
こういうスタイルの小説は嫌いじゃないのだが

またも出ました!有吉佐和子悪女についてスタイル。
深木章子鬼畜の家もそうだったけど
このスタイル、一見簡単なようでかなり難しい手法だと思う。
よほどのキャラクター書き分けの才と、語彙の豊富さ
文体の技量がなけりゃ読むに耐えません・・・

とにかく狂言回し役の若い男の口調がイヤだ

「なんすか」「つーか」「違ーよ」(ちげーよ)
作者の意図なのはわかるけど
全編ずーっとこれで通されるとウンザリしてくる。

「俺、頭悪いし、敬語とか知らねぇし、態度悪いから怒らせるかもしんねぇすけど」
それで相手がムッとすると
「態度は悪いんだよ俺は」と開き直る。
「俺、本気でモノ知らないんすよ」
本気でって何だそれ!?と読んでるこっちが怒りたくなる。

百歩譲って、狂言回しがこれだとしても
他の登場人物のキャラがもっと多彩で深ければおもしろいのだが
表面上はバリエーション豊富なようで
彼らの語る内容がすべて自分の境遇への愚痴なのでおもしろくない。
(それも意図的なのもわかるけど)

そのくせ「揶う(からかう)」「乍ら(ながら」「慥かに(たしかに)」「寧ろ(むしろ)」
など、この作品の中では浮きまくるような難しい漢字表記も鼻につく。

ミステリーとしても特に斬新な驚きもないし(犯人なんか最初にわかるし)
読後感もすっきりしないし
時間返せ~って言いたい一冊だった。

'11 8 ★☆☆☆☆
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by Gloria-x | 2011-08-20 16:30 | ブックレビュー

最近サラッと読んだ本

最近、半日ほどでサラッと読んだ本をまとめてご紹介

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阪急電車/有川浩
映画化されて人気の小説。
映画予告は「気持ちよく泣けて心温まるちょっといい話」
的なイメージでまったく興味をそそられなかったが
妹のリコメンドで読んでみたら
意外にサバサバした内容でよかった。
映画で中谷美紀がやった役、最適のキャスティングだ。

著者のことは「ありかわひろし」という男性作家だと思い込んでいた。
★★★★☆





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花桃実桃/中島京子
前作「エルニーニョ」は期待ハズレだった。これはまあまあかな。

40代シングルOLがリストラされ、
父親が遺した古いアパートを相続して管理人になる。
そこには個性的な住人たちが住んでいた・・・

舞台となるアパート同様、昭和の香り漂う作品。
「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」の世界を彷彿とさせる。
中島京子の描くヒロイン像は
女のいやらしさやナルシシズムがなくて気持ちいい。

★★★★☆


c0008209_14195164.jpg勝手にふるえてろ/綿矢りさ
表紙のイラスト&装丁が悪い!
前作「夢を与える」的なセンスで売ればいいのに・・・

ヒロインは26歳でバージンのOL。
中学時代の同級生に未だに片思いを続けているが
同じ会社の営業マンに告白され
2人の男に対する感情に揺れ動く・・・

こう書くと、おもしろくもなんともなさそうだし
実際、どうということのない作品だが
ダレそうになってくると、その頃合をみはからったように
「う~んさすが上手いな」と思わせる内面描写やフレーズが出てくる。
それも計算か?
★★★☆☆


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鬼畜の家/深木章子
著者は東大法学部卒の元弁護士で60歳を機にリタイアし作家に。
名前は「ふかきしょうこ」と思ったら「みきあきこ」だそうです。

「おとうさんはおかあさんが殺しました。
おねえさんもおかあさんが殺しました。
おにいさんはおかあさんと死にました。
わたしはおかあさんに殺されるところでした」
保険金目当てで家族に手をかけてゆく母親による巧妙な殺人計画、
娘への殺人教唆、資産の収奪・・・信じがたい鬼畜の家の実体が
生き残った娘の口から明らかにされていく。



各章を違う人物の語りで主要人物のキャラクターや事件の背景を描写するという
有吉佐和子悪女についてスタイルの構成。
このスタイルは好きで、前半はかなり興味をそそられたが
後半急速に都合のいい展開になって失速する感あり。

★★★☆☆
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by gloria-x | 2011-07-24 15:17 | ブックレビュー

アナ・ウィンター ファッション界に君臨する女王の記録/Front Row ジェリー・オッペンハイマー

「プラダを着た悪魔」のM・ストリープがいい人に見えるほどの強烈キャラ!

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VOGUE編集長アナ・ウィンターという人物については
ドキュメンタリー映画「ファッションが教えてくれること」を観た時も
「氷の女王」と評される冷酷な性格や
人を人とも思わない傲慢な態度に呆れたがこれを読んでさらに仰天!

アナの少女時代から現在('04年)までを
彼女を知る様々な人物の証言で構成しているのだが
オブラートにくるんでいてさえ、すべて悪口なのがすごい!

才能があるとはいえ
こんなに人に嫌われる人柄で
よくここまで成功できたよねぇ・・・


プラダを着た悪魔でメリル・ストリープが演じた
ファッション誌「ランウェイ」の編集長はアナ・ウィンターがモデルと言われている。
あの編集長の強烈なキャラクターやエピソードは
コメディ映画的に誇張して描いているのだと思っていたら・・・
実は本物のほうが百倍も強烈!

★大物男性には徹底的に媚びを売って昇進・出世する
★ライバルを蹴落とすためには汚い手も平気で使う
★自分の部下や売り込みにきたクリエイターのアイデアを堂々と盗用する
★長年尽くしてくれた部下が好条件でヘッドハンティングされると
  「昇進させる」と嘘をついてチャンスを潰す


ほぼ全員がアナのことを悪く言いながら、共通するのは
「とにかく男は全員アナにメロメロになる」と言うのが不思議ー!
ルックスは悪くないと思うけど、男ウケするタイプには見えないんだけどなぁ~?

仕事面だけではなくプライベートでもかなり歪んだ性格で
特に、幼なじみヴィヴィアンに対する長年にわたる非常識な仕打ちには
驚きや呆れを通り越して病的なものさえ感じる。

とはいえ、アナの少女時代~若い頃のエピソードは羨ましさ満載。

★14歳からロンドンで最も高級なエステに毎週通ってフェイストリートメント
★14歳からセレブ顧客を多数抱える毛髪学者のサロンに通って
  マッサージや自分専用に特別配合された製品でスペシャルなヘアケア
★15歳で両親から専用のフラットを与えられる(しかも両親は放任主義!)
★10代から高級ブランドの服しか着ない
★高校中退なのに、雑誌の仕事がしたくなり
 大物編集者である父親のコネで一流出版社に入る
★巨額の信託財産があるので給料なんかどうでもいい
★ロンドン~N.Y間の週末移動にコンコルドをタクシー感覚で使える


来世はこんな身分に生まれ変わりたい~!

世界中に名を知られるほど成功し
欲しいものはすべて手に入れ、やりたいことはやりつくしても
アナ本人が幸せで満たされているようには思えないのが
せめてもの溜飲下げポイントかも?


'11 7 ★★★☆☆
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by gloria-x | 2011-07-09 11:15 | ブックレビュー

儒教と負け犬/酒井順子

東京、ソウル、上海。東アジア三都市「負け犬」たちの実態

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大ベストセラー負け犬の遠吠えが出版されたのは2003年。
2009年、著者・酒井順子氏はふと気づく。
近頃の女性は負け犬ブームの頃より早く結婚するようになったのでは?と。

「負け犬」という言葉が社会現象となった当時、10代、20代だった若い女性たちが
「30歳を過ぎて独身の女は負け犬」と言われる先輩たちを見て
「わたしはああはなりくない!」と早めに結婚するようになったというのだ。

背景には時代の変化もある。
右肩上がりの成長や無限の可能性を信じられたバブル世代とは違い
バブル崩壊、世界的大不況の時代を生きる若い女性たちには
「早く身を固めて安心したい」という考えが強いらしい。

先進国の出生率を比較すると
「男は仕事、女は家事と子育て」という男尊女卑傾向や
「成長した子供が親と同居するのも当たり前」という
伝統的家族観が根強い国ほど出生率が低いことに注目した著者は
「儒教」というキーワードを手がかりに韓国と中国の独身事情を探る旅に出る。

ロマンチストでけっこう身持ちが固いソウル負け犬
合理的でプライド高く、女尊男卑が当たり前の上海負け犬


ソウル、上海の負け犬・勝ち犬それぞれの座談会がおもしろい。
負け犬は「一流大卒で高収入な職に就き、海外留学経験やMBAなどの資格取得も普通」
勝ち犬は「実家は裕福で自身も一流大卒。夫の職業は医師、弁護士、会社経営」
と両都市ともにかなりハイレベル。

ソウル負け犬で意外だったのは
日本のように女性同士で性体験の話などしないという事実!
ソウルでもヒットした「SATC」だが、ファンとして楽しんでいても
「海の向こうのお話」と捉えているらしい。
一方、上海では同じ「SATC」を観ても
「わたしたちの生活のほうがもっとおもしろいのにねー」という感覚らしい。

とにかく上海女性の女王様っぷりに驚愕!
上海では「女尊男卑」が当たり前で、男性がひたすら女性につくし
ほとんどの家庭では伝統的に夫が料理や家事をするのだとか。
それに対する上海女性のコメントもすごすぎー!

「男って基本的にマゾだから女に管理されると嬉しいのよ」
「優しくすると男って女を舐めてくるじゃない。キツく言うほうがいいのよ」
「日本人とつきあったことあるけど、すごく偉そうでムカついた!」
「上海の女はいかに一円でも多く夫から毟り取るか常に考えている。
結婚するなら最低でもマンションくらい持ってないと」

「夫が待ち合わせに遅れたら、10分いくらという風に必ず罰金を取ります」
「頭にきた時はヒールで夫の頭を殴ったりするわね」etc・・・

たまにバラエティ番組で見かける「鬼嫁」みたいだけど
「敵味方」じゃなく「夫婦」なのに愛はないのだろうか?
こんなに高圧的な態度で夫に接して
はたして女性本人の心中は幸福なのかしらん?
って不思議に思うわたしなんか上海女性から見ると
ロマンチスト幻想を抱いた甘ちゃんなんでしょうかねー。

'11 6 ★★★★☆
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by gloria-x | 2011-06-28 13:41 | ブックレビュー

「婚活」現象の社会学 日本の配偶者選択のいま/ 山田昌弘・編著

結婚できた、しかも恋愛で。まるで奇跡ですやん!と思えてくる一冊

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「結婚したいのにできない」
未婚者が増えているのはなぜか?


ただ待っていても結婚相手は現れない。
就職したければ就職活動(就活)するように
結婚したければ自分から積極的に活動しなければならない。

それを「婚活」とネーミングした著者は
「パラサイト・シングル」「格差社会」という言葉を浸透させた社会学者。

先日、会社の20代半ばの男子が嘆いてた。
「こんな年収じゃ絶対に結婚なんかムリっすよねー」
それに対して同じく20代半ばの女子が
「しっかり稼いでくれるカノジョ見つければいいやん」
こういう本を読まずとも、若い人たちは現実を認識してるし
打開策もちゃんとわかってるんですね・・・

著者曰く社会学とは人が見たいと思わない現実をあえて明らかにすること
「何もしなくてもいつか自動的に結婚できるはず」という
依存体質から抜け出さないと結婚は無理。
厳しい日本の現実をわかってもらうために「婚活」という言葉を作ったが
著者の意図を超えてブームになり、一人歩きして
「数少ない高収入男性をつかまえるための活動」と転じてしまった。

世間一般の認識と現実のギャップ指摘、
生まれた年代別による結婚観なども具体的でわかりやすい。
日本の未婚率・少子化上昇の原因は
「仕事を続けたい女性が増えた」からとまことしやかに言われてきたが
現実の女性の本音は「仕事を続けようが続けまいが、
そんなことに左右されない経済力を持った男性と結婚したい」
しかし、近年の経済・雇用状況の変化によって
低収入男性が増えたことが結婚の減少につながっているという指摘。

男性は「経済力+外見+コミュニケーション能力」が揃っていないと
見合いという土俵にすら乗せてもらえないというが
「バンドが売れてビッグになったら結婚する」(ロックスター志望の30代男性)
「俺のことを好きになったら一緒に苦労してくれる女性がどこかにいるはず」
(月収6万円程度の40代男性)
「高収入になる」「低収入の自分を好きになる女性と出会える」という
ありえない夢を見ている男性も実在する。

一方、リーマン・ショック以降、女性の「婚活」意識は
「この不況下でも安定した収入を稼ぐ男性を勝ち取る」ことへ変化した。
「AERA」記事の抜粋は例の如く「いかにも」な極端例でウンザリ・・・

恋愛を基礎とする結婚こそ
唯一の正統な男女関係である

これはロマンティック・ラブ・イデオロギーという思想。

わたしは生まれつきそれが当然と思い込んでいたタイプ。
しかし世の中には真逆の考え方を持つ人もいて(そっちの方が多い?(?_?))
「一流企業勤務で経済力があり、なおかつ恋愛経験がないため
すべて自分の意のままに操れる」男性と見合い結婚した知人もいる。

いい悪いではなく、わたしには絶対できないマネなので
驚嘆と同時にある意味尊敬の念すら覚えてしまう。

アメリカの結婚活動や、アメリカから見た現代日本の婚活、
現代中国の激変しつつある婚活(日本に似ている)などの項もおもしろかった。

だけど、もしわたしが現在未婚者だったら
本書を読んで「行動しなきゃ!」と思うより
現実の厳しさに打ちのめされてしまいそう・・・(-_-;
愛する人と偶然出会って恋愛⇒結婚に至り
それが継続してるなんてまるで奇跡に近い?

何も考えず歩いてきた道が有名な心霊スポットだったとか
野生の熊がウロウロするデンジャラス地帯だと後で知り、
今さらゾーッとして無事に感謝するような感覚というか
それが冒頭の感想になったわけです。

'11 6 ★★★★☆
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by gloria-x | 2011-06-01 19:12 | ブックレビュー

モンスター/百田尚樹

整形で別人のような美女になる。女の夢のひとつですよね。え?わたしだけ?

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町でいちばん美しい女は、かつてバケモノと呼ばれていた。

田舎町に突然現れ、瀟洒なレストランを始めた絶世の美女。
彼女の顔はかつて畸形的なまでに醜かった。
バケモノ呼ばわりされて虐げられ、友達もできない悲惨な日々。
実の親からも見放された彼女は追われるように東京へ・・・・
ある日、美容整形手術に目覚めた彼女は
東京で最低限の生活をしながら
手術費用を貯めては手術を繰り返し、完璧な美人に変身を遂げる。


「ビューティーコロシアム」という番組がけっこう好きなのだが
あそこに登場する女性の中にも
「畸形的なまで」としか言いようのない人がいる。
そんな女性が整形によって生まれて初めて自信を持ち、
笑顔になるのを見ていると心から「よかったね!」と思う。
日本ではまだまだ整形に対して偏見が根強く、
バラエティ番組でも事情通が「〇〇は整形」と
鬼の首を獲ったかのように話題にしたりしてるけど
美容整形でコンプレックスが解消され、
心の問題も解決して明るく生きていけるなら
周囲がとやかく言うことはないと思う。
(商売の資本投資として整形する芸能人は別として)

「私は戦って美しさを手に入れた」
こう言い切る主人公の潔さは読んでいて痛快!


醜い時代の周囲の仕打ち&それに対する主人公の独白は
ちょっと冗長で読むのがしんどいが
東京に出て主人公が開き直ってからおもしろさが加速。
職場で顔をからかい、執拗にいやがらせを続ける上司や同僚に
「てめぇ、顔を刻んでやろうか!」「ぶっ殺してやろうか」と啖呵を切り、
手術費用を稼ぐために風俗の面接を受けるも(処女なのに!)
「お前みたいなブスがやれる商売じゃないんだ」と
軒並み断られ、仕方なくSMクラブのM嬢になったり・・・(しつこいけど処女なのに!)
それも、自分はおそらく一生セックスとは縁がなかったのだから
仕事とはいえセックスできるならよしとする驚異のポジティブさ!

よくある「顔に難のある女が整形で美女になる復讐譚」ではなく
美醜による差別やいじめの現実、美容整形の詳細、
ブスの心理描写などが時としてイヤになるほどリアル!
顔さえ直せばあら不思議、スタイルはもともとよかったの?
なんてムシのいい話ではなく
主人公はバケモノみたいな顔+デブだったのだ!
それを死に物狂いの努力で痩せるというところが共感できる!

実はわたしも常々、お金とタイミングさえ許せば
整形したいと子供の頃から思い続けているクチ。
じゃあさっさとやれば?ですよねー(-_-;)

'11 5 ★★★★☆
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by gloria-x | 2011-05-15 22:49 | ブックレビュー

抱擁、あるいはライスには塩を/江國香織

70年代大島弓子ワールド全開!(褒め言葉として)

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東京・神谷町で大正期に建てられた洋館に暮らす柳島家。
ロシア人の祖母、子供を学校にやらない教育方針、
息子は大学卒業後一年間ヨーロッパ遊学(留学ではない!)する習慣、
そして4人の子供のうち2人は父か母が違うという事情。
三世代、百年にわたる「風変わりな家族」の秘密とは・・・


久々に江國香織作品を思う存分堪能。
脳内映画(漫画?)を鑑賞しているかのごとく
たいへんビジュアルイメージしやすい小説である。
章(時代)ごとに一人称の語り手が変わるスタイルで書かれているのだが
柳島一族の人間による章は美しくほろ苦甘く、徹底的に生活感皆無。
そして、一族以外の人物による章が適度なスパイスになっている。
この構成はお見事!

家族や兄弟姉妹だけに通じる合言葉や、独特の言い回しなど
わたしもそういうものを実家の家族や夫との間に山ほど持っている。
それらをあらためて愛おしく感じ、ずっと大事にしようと思った。

読んでいる間ずっと感じていたのは
「まるで大島弓子の漫画みたい!」という感覚。

お金持ちの美形家族、古い洋館、美しい庭、
庶民感覚とは明らかに違う生活習慣、家族の秘密etc・・・
といった道具立てが丸ごと大島弓子ワールド!
(江國作品では「神様のボート」も大島弓子ワールドだと思った)

極めつけは叔父・桐之輔というキャラクターである。
ルックスも、ファッションも、性格も、言葉遣いも何から何まで
「ヨハネが好き」「F式蘭丸」「ジョカへ・・・」
「雨の音がきこえる」「銀の実を食べた?」あたりの
70年代の大島弓子作品の登場人物そのまんまなのだ。
大島弓子作品(特に70~80年代の)を愛する人なら
ハマること必至だと思います。

それにしても最強ですね。
東京都内の裕福な一族で、ロシア人の血をひく美形なんて。
ああ、来世はこんな家の子に生まれたい!

わたしが激しく共感したのは「肉を食べる」ことについての一節
~動物の温かな生命をきちんとお腹に入れないと、人は心に力がつかない。
 精神的生命力とでもいうべきものが薄くなり、
 人生を愉しもうとする欲望や、血の気や活気も薄くなる。~

'11 2 ★★★★★
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by gloria-x | 2011-02-02 21:19 | ブックレビュー