カテゴリ:ブックレビュー( 184 )

紙の月 /角田光代

ひしひしと身に迫り、身につまされる怖い話。
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裕福な家庭に育ち、結婚後も経済的に恵まれた生活を送っていた主婦が
パートで銀行に勤め、優秀な成績を認められて契約社員に。
ある日、営業帰りに立ち寄ったデパートで買物する際、
顧客から預かった金に手をつけてしまう。
それを境に彼女の中でバランスが崩れ、金銭感覚が麻痺。
やがて約1億円を横領するまでになる。
事件発覚前に海外に逃亡した彼女は果たして逃げ切れるのか?

ああ~またしても読みごたえ満点!
ページをめくる手が止まらない反面、
読み終わるのが惜しい&引き込まれすぎてクラクラし
セーブしながら読むという矛盾のスパイラルに・・・

ストーリーは主人公の梅澤梨花、彼女の元同窓生、元恋人、
それぞれの視点で交互に進行する。
そして、各人がなんらかの形でお金の問題を抱えている。

主人公・梨花が夫との会話で抱く
言葉にはできないもやもやした違和感や
横領を始めてから抱く、不思議な多幸感や万能感。
そのあたりの心理描写がものすごく緻密でリアル!

「浮世の悩みの9割はお金で解決できる」
「この世でいちばん怖いのは貧乏」
とわたしは常々思っている。
「お金がすべてじゃない」とキレイ事を言えるのは
お金の苦労をしたことがない人だ。

こういう考えを持つわたしには、
ほんとリアルというか身につまされっぱなしの怖い話でした(-_-;

G・W、横領したお金で若い恋人と
高級ホテルのスイートルームに連泊し、
ルームサービスで食事やシャンパンを頼む。
高級店で買物三昧し、ハイヤーでホテルに帰る。
当然、出会う人誰もが親切で気持ちよく接してくれる。
ストレス皆無の天国のような世界だ。
梨花は資産家の顧客たちの顔を思い浮かべ、
金持ちが一様におっとりとしていることに納得する。

その一方、連休中の平日はホテルから銀行に出勤。
満員の通勤電車、人を押しのけ突き飛ばして歩き、
ガツガツと卑しい表情の人々の群れ。
それこそ梨花が本来いるべき現実社会なのだが
一度天国を味わった彼女には我慢できない。
疲れ果ててホテルへ帰ってきた梨花は
「こここそ本来のわたしの居場所だ」と心からホッとする。

スケールの差こそあれ、
この感覚はわたしにも馴染み深いものである。

梨花の元同級生で、バツイチ編集者の買物感覚も
共感する部分が多々あり恐ろしくなった。
一方、元恋人の妻は共感度ゼロで不可解な存在。

読む人のバックグラウンドや金銭感覚によって
感情移入のポイントや度合いも様々なのだろうけど
現代日本に生きているなら、
仙人みたいに浮世離れした人でないかぎり
かなり共感するのではないだろうか。


'12 4 ★★★★★
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by Gloria-x | 2012-04-09 23:26 | ブックレビュー

罪悪 / フェルディナント・フォン・シーラッハ

最終篇「秘密」、最後の一行がゾッとするほど気持ちいい!

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著者は刑事事件専門の弁護士で、
実際に手がけた事件をもとに書いた短編集二作目。

処女作犯罪も強烈なインパクトがあったが、
文体や表現、全体の構成など
「本業は弁護士なんですけど、事実は小説より奇なりであるなぁと
痛感する事件が多く、ドキュメンタリーではない手法でカタチにしたくて
こういう本を書いてみました」
的な印象は否めなかった。
(あくまでもわたし個人の想像です(;^_^A)

本作では、いい意味でエンターテイメント色が濃くなったと感じた。
反面、処女作のどこか浮世離れしたようなおとぎばなし風味は薄れ、
現実的で後味の悪さ、エグさを増しているが個人的には◎
感情を抑え、そっけないくらい淡々とした文体はそのままに
15篇がバラエティに富んで読みごたえ満点で
一気に独特の世界にどっぷり引き込まれてしまった。

著者がここぞと「プロ意識」を発揮したのが
最終篇のラスト一行のオチ。
最終行からどんどん膨らむ想像の世界が恐ろしくも気持ちいい。


'12 3 ★★★★★
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by Gloria-x | 2012-04-03 17:53 | ブックレビュー

曽根崎心中 / 角田光代

江戸時代の女性心理をリアルな現代感覚で表現!


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18世紀初頭、大阪の曽根崎で実際に起きた心中事件をもとに
近松門左衛門が書いた人形浄瑠璃を、角田光代が現代語の小説に翻案。
大阪内本町の醤油屋・平野屋の手代・徳兵衛と
堂島新地天満屋の遊女・お初の悲恋の物語。

時代小説は苦手だけど、さすが角田光代!
江戸時代の遊女の心理をここまでリアルに共感度高く表現するとは。

徳兵衛が友人に騙された顛末を話すのを
最初はハラハラしながら聞いていたお初。
話が長いわりに肝心なことを言わない徳兵衛に
「何をのうのうと話してるのか、この男は」と
心の中でイライラを募らせたり、
がくりと背を丸め、うなだれて泣く徳兵衛を見て
「わたしが守ってやらないと」と思ったり、

手に手を取って逃げた最後の最後にきて
実は徳兵衛は「騙された」と嘘をついているのでは?
狂おしいほど好きな男だけど
実は自分は彼のことを何ひとつ知らないのでは?
とチラッと思ったり。

惚れた男の、弱いところも情けないところも
全部ひっくるめて、それでもどうしようもなく好きという女心が絶妙。
ラストに向かってたたみかけるような心理描写は圧巻だ。

おかみがお初に言う。
「恋なんかするもんやない」

金も甲斐性もない若造との恋などという
つまらないものでで自らの値打ちを下げるな、と。

「つまらんもんやろうか」と問うお初に
「つまらんもんや」とおかみは即答する。
「一年たったら、笑い話。十年たったら、覚えてないわ」

言えてる!!!
渦中にいるときにはわからないんだけどね。

「運命の人はいるよ」と自信たっぷりに言う姐さん。
運命の人は前世でも縁のあった人だから
何度生まれ変わっても、一目見ればすぐわかるという。

運命の人をまちがえることもあるのか
まちがえたらどうなるのか、と聞く後輩たちに姐さんは

「心配おまへん。まちごうたときはすぐにわかる。
その恋がうまくいかなんだら、すぐわかるんや。
あてらが不安になる恋、苛々する恋、
信じられへん恋、会えん恋、すれちがう恋、
ぜえんぶまちがいなんや。
運命の人やったら何ごともすんなりいくもんやで」


これも言えてるー!!!
経験者なら全員共感するはず。

*********************

徳兵衛が騙し取られたという「二貫」を
「現在の金銭感覚ではおよそ三百万円」と
巻末の用語手引で解説してくれているのが◎

時代モノの映画を観ていつも隔靴掻痒なのは
劇中にセリフで出てくる貨幣価値が
いったい今の感覚でいくらなのかわからないこと。
飲み食いの値段くらいなら推測できるけど
侍の給料、刺客の報酬、遊女の身請代、賄賂etc・・・
現在の価値で〇十万円位、〇百万くらいとわかったほうが
感情移入度もアップすると思うんだけどなー。


'12 3 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2012-03-08 10:27 | ブックレビュー

相続人TOMOKO / 大沢在昌

かっこいいのに嫌味じゃないヒロインを書かせたら大沢在昌の右に出る者なし!

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魔女の笑窪」「魔女の盟約」を教えてくれたmiffyさんのリコメンド。

彼女のコードネームはTOMOKO。元CIAの優秀な工作員。
上司の命令で米国有数の財閥ウェリントン家の総帥に接近したTOMOKOは
不覚にもターゲットと恋に落ち、結婚する。
実は彼女に下された命令の裏には巨大組織の陰謀が隠されていた。

前にも書いたけど、大沢在昌ってキャラクター作りの天才ですね!
特にかっこいいヒロインを書かせたら右に出る者なし。

完璧な容姿と頭脳を持ち、クールでタフ。
普通、こんなパーフェクトなヒロインってどこか嫌味で鼻につくはず。
特に女性読者の目で見ればツッコミどころ満載だろう。
しかし、大沢在昌が描くと鼻につくどころか
素直に「かっこいい!」とヒロインに好感を持ってしまうのがすごい。

これって男性作家には珍しい、得難い才能だ。

ジャンルを問わず、男性作家が描くヒロインって
女から見れば「こんな女いるー?」とか
「このヒロイン、絶対に女友達いないよねー」的なキャラが多いもの。

米国軍需産業と右翼の秘密組織、米陸軍特殊部隊、
日本の警察、ヤクザが入り乱れて一人の女の命を狙い、
TOMOKOは単身戦いを挑む。
荒唐無稽なストーリーだけど細部まで綻びがなく
(あってもわたしには気づかないけど)
結末までグイグイ引っ張られて一気読み!
そして、TOMOKOと一蓮托生のハメになる
元売春婦・智子の成長が気持ちのいい読後感。

映像化するなら誰だろう?と想像してたら
なんと!2000年に小柳ルミ子で映画化されてたらしい!
いや~そりゃないでしょ~(笑)

'12 2 ★★★★★
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by Gloria-x | 2012-02-25 15:51 | ブックレビュー

ティム・ガンのゴールデンルール/ ティム・ガン

ただのハウツー本と思うなかれ。笑いあり、感動あり、驚きあり♪

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プロジェクト・ランウェイは毎シーズン楽しみにチェックしていて
番組スタート時からティム・ガンの大ファン。
書店でこの本を見つけた時は「キャッ!こんな本が出てたなんて!」と小躍りした。
(もちろん誰でも美しくなれる10の方法も同時購入)

飛びつくように買ったけど、正直言うと
よくあるハウツー&ファッション業界の内幕モノかと思ってたら
笑いあり、感動あり、驚きあり!
読み物としてとっても魅力的なのだ。
とにかくティムに共感しっぱなし!
ますます彼のことが大好きになったわー♪

ティムはこの本の中で繰り返し言う。
人には優しく、礼儀正しく、マナーに気を配りなさい。


「ウェイターに失礼な態度を取る人々」
「権力を行使したがる人々」「礼儀のなさは罪」などの項を読むと
彼の人柄と生きる上での信条に好感を抱く。
特に、人とのつきあい方、墓場まで持っていくべき秘密
についてのティムの考え方には全面共感!

美輪明宏の名言
「人間関係は腹6分目くらいがちょうどいい」

を聞いた時に、雷に打たれたように感じたのと同じ
自分にOKを出されたような感覚を覚えた。

悪名高きアナ・ウィンターやマーサ・スチュアート、
ダイアン・フォン・ファステンバーグについてのエピソードも笑える。

上品でスタイリッシュな見た目&番組でのポジションから
わたしはティムについてこう思っていた。
たぶん家柄もよく、いい意味で苦労やコンプレックスとは無縁で、
順風満帆に成功への王道を歩んできたファッション界の大物。
もちそんスーツは高級デザイナーのオーダーメイド。
ところがこの本を読んでびっくり!
大変な努力家の苦労人で、経済的にも長年カツカツの生活だったらしい。
そして今でもスーツは既製服とか。

家族の話は驚きと笑いの連続!

ティムの父親はFBIでフーバー長官のゴーストライターを務め、フーバーとも長年親しかった人物。
ゲイであることをカミングアウトしているティムだが
子供の頃、妹とバービー人形で遊んでいるティムを見た父は
常軌を逸した態度で怒り、濡れたタオルでティムをぶったのだとか。
今思い出してもその時の父親の怒りは異常だったらしい。
そのことを女ともだちに話すと
「ひょっとしたらお父様もゲイだったのでは?」
そう言われてティムは告白する。

フーバー長官と父親の関係を
ずっと疑っていたのだと!


この項は最近J・エドガーを観たばかりなので信憑性があった。

ティム曰く「エリザベス女王にそっくり」な母親のキャラと数々のエピソードも強烈だ。

大人になってから母とランチをしていて、
レストランで泣くほどの言い争いになったエピソードは
まるでわたしと母のことかと思った(笑)


ティムはゲイだと公言しているが
母親は未だにそのことに気づかないフリをしているという。
しかも、55歳の息子にネクタイや服の趣味への小言から始まり
「もういい歳なんだから誰かと一緒になる気はないの?」と言うのだとか。
(ほんとに母親という生き物は・・・・(-_-;)

さらにすごいエピソード。
母親は夫が家に持ち帰って隠したFBIの最高機密文書の草案を見つけ出し
バスルームに閉じこもってゆっくり読みふけったという。
それに気づいた父親は、ドアを叩いても妻が開けないので
ついに斧でドアをぶち破ったのだとか!

ティムはこの本で自身のトラウマを告白している。
かなり衝撃的な内容なのだが、大げさにならず芝居がからず、
真面目だけど深刻ぶらず、
終始正直な態度で語っていることに尊敬の念を抱いた。

以下は特に共感した一文

◆おしゃれをしたり礼儀にかなった格好をするのを重荷に感じる人もいます。
  (中略)もしそうならずっとベッドの中にいればいい。

◆やる気のない格好でぼうっとしていれば、
  まっとうに生きていくことなどできるわけがありません。

◆人前できちんとした格好をすることは、自分に自信を持ち
  周りの人たちに敬意を表すことと同義なのです。
  通りを歩いていて、きちんとした格好をした人たちに出会うのは
  ほんとうに楽しいものです。

◆「話せば楽になる」・・・・この世で最も陳腐な決まり文句のひとつです。
  過ちを打ち明けることで他人を傷つける恐れはないでしょうか。
  あるなら、黙っていましょう。

'12 2 ★★★★★
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by Gloria-x | 2012-02-17 16:35 | ブックレビュー

海街Daiary 1~4 / 吉田秋生

わたしも三姉妹ゆえ、姉妹モノって理屈抜きで共感の宝庫。

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鎌倉に住む香田三姉妹、幸、佳乃、千佳のもとに、山形県から父の訃報が届く。
父親は15年前に家族を捨てて女性と駆け落ち、以来音信不通だった。
葬儀に行くと、姉妹の父親は駆け落ち相手とは既に死別し
別の女性とお互いに子連れで再々婚していたことがわかる。
姉妹はそこで異母姉妹の中学生・すずと出会う。


妹SHIHOのリコメンドで読了。
わたしも三姉妹(+弟)なので、姉妹モノには理屈抜きで共感してしまう。

向田邦子「阿修羅のごとく」谷崎潤一郎「細雪」
映画だと「イン・ハー・シューズ」
江國香織もよく姉妹モノを書いてるけど、ちょっと違うんだよなー。
あ、姉妹モノの定番「若草物語」は
わたしの母が好きだったらしいけどわたしは未読。
話はそれるが、女子なら誰もが好きと言われる(ほんまかいな?)
「赤毛のアン」も一度も読んだことがない。
子供の頃からいわゆる「女のコ」じゃなかったのですねー。

姉妹というのは不思議な関係である。
女ともだちよりも親密で気楽でありながら
微妙な力関係や距離のバランスがあるし、
血が繋がっていても(いるからこそ?)踏み込めない領域もある・・・

同じ両親から生まれ、同じ家で育っても
性格もモノの考え方、感じ方も違う。
そして、意外なことに「共有した過去」の捉え方も違うのだ。
わたしは大人になってから初めてそのことに気づいて
かなりショックを受けたのだが
この物語はそこがきちんと書かれているのがすごい!


姉妹モノって長女はたいてい真面目でしっかり者。
香田姉妹の長女・幸もベテラン看護師で絵に描いたような「長女」
残念ながらわたしはまったく長女タイプじゃないので
いつもちょっと複雑な気分になる。

次女・佳乃の酒呑みっぷりがリアルでシンパシー♪
三女・千佳は絶妙なキャラクター&ポジションだ。
三姉妹、小競り合いや、時にはシリアスな口論もあるが
基本はしっかり結束しているし、時にはお互い見て見ぬフリをするところが大人で◎

中学生すずが実質的な主人公なのだが
物語のボリュームバランスとして、
大人たちのエピソードがもっと多くてもよかったのでは?

*************************

わたしも子供時代には妹たちと壮絶なバトルを繰り広げてきた。
殴り合い、服が破れるほどのつかみ合いはもちろん、
2対1に分かれて陰湿な無視というのも・・・
そこで切磋琢磨してきたおかげか
現実社会の同性関係にはあまり悩んだことがない。
と同時に、女同士でいつもツルんだり、女だけで群れたりが大の苦手!
「公園デビュー」とか「ママ友」と無縁の人生でよかったわ~(-_-;


'12 1 ★★★★★
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by gloria-x | 2012-02-05 16:27 | ブックレビュー

犯罪 / フェルディナント・フォン・シーラッハ

残酷な話ばかりなのに気品さえ感じる短編集。簡潔で硬質な文章が効果的。

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書店で一目見て強烈に惹かれた。
ドイツ人の弁護士という著者のプロフィールから
「FBI心理分析官」的な内容かと思っていたら
まったく逆方向だったけど久々に当たり!の一冊。

一生愛しつづけると誓った妻を殺した老医師。
兄を救うために法廷中を騙す、移民の犯罪者一家に生まれた末弟。
人や動物が数字に見えると言い、羊を殺し続ける伯爵の息子。
エチオピアの寒村を豊かにしたドイツ人銀行強盗。
弁護士の著者が現実の事件を基に、
異様な罪を犯した人間たちの哀しさ、愛おしさを描く短篇集。


残酷で異様な事件の話ばかりなのに、
芸術的、文学的というか美しさや気品さえ感じるのが不思議。
感情を削ぎ落として淡々と紡がれる簡潔な文章が◎!
「エチオピアの男」「チェロ」が好き。



'12 1 ★★★★★
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by Gloria-x | 2012-02-02 11:14 | ブックレビュー

ジェントルマン / 山田詠美

ゲイである夢生の、子供時代の回想にはかなり共感したが・・・

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容姿端麗、文武両道、加えて気取らない気さくさと優しさで
周囲の人間誰をも魅了してしまう青年・漱太郎。
同級生の夢生はその姿を冷ややかに観察していたが、
ある日、漱太郎の美しくも残酷な本性を目撃してしまう。
それは、紳士の姿に隠された、恐ろしき犯罪者の貌だった。
そして、夢生はその背徳にすっかり魅せられてしまう。


山田詠美はデビュー作からずっと読んでいる大好きな作家。
シンプルで意味深なタイトルと帯のコピーから
もっと衝撃的で強烈な内容を期待していたのだが
期待が大きすぎたのかもしれない・・・

誰もが魅せられてしまうという漱太郎という人物に
あまり魅力を感じなかった。
「老若男女、誰をも魅了する人物」と聞いて
思い描くキャラクターの枠にきっちり収まりすぎだし
その裏に隠された「残酷な本性」「犯罪者の貌」も
浅く凡庸な印象で残念。

ただ、ゲイである夢生の子供時代の回想、
家族や近所の子供たちに抱く違和感にはかなり共感し
自分の子供の頃を思い出した。
(わたしは100%ストレートですけどね(;^_^A)

血の繋がりや周囲の環境にフィットしない個性を持ち、
周囲に理解者がいないと子供時代はほんとにヘビー。


子供のいないわたしがエラそうに言えないけれど
子育てって国家事業並みに責任重大な行為だと思う。
世の親たちはそれに気づいてるのだろうか?
いや、気づいていたら怖くて子育てなんかできないのかも?




'12 1 ★★★☆☆
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by Gloria-x | 2012-01-29 17:47 | ブックレビュー

真綿荘の住人たち / 島本理生

気になりつつ縁がなかった作家。言葉選びのセンスがよく文章が上手い!

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1983年生まれの著者が15歳でデビューし、着々と作品を発表し、
いろんな文学賞の候補になったり受賞したりするたび、ずーっと気になっていた。

何度も手が伸びたけど、パラパラめくると
若い作家ゆえ当然描く世界も若くて
共感できないばかりか物語世界にすら入れないのが明らかで
今まで読んだことがなかった。
('84年生まれの綿矢りさは抵抗なく何冊も読んだのに?)

読んでみたら予想外にフィット!

恋愛小説家の綿貫千鶴が大家をつとめるレトロな下宿
「真綿荘」に集まる住人たちのちょっと風変わりな恋と青春の日々・・・

登場人物全員、かなり個性が強いキャラなので
一歩間違えばやりすぎになったり鼻につきそうなのに
キャラクター設定も嫌味がなくリアリティがあるし
セリフや感情描写も自然でていねい。

なんといっても語彙が豊富でセンスがいい!
文章が上手い作家の作品って読んでいて気持ちいいのよねー!


読みながら登場人物のキャスティングができたり(実在の俳優などで)
自分の脳内で映像化しやすい小説って好きだ。

だけど当たり外れが激しい作家かも?
本作が意外によかったので
2011年直木賞候補になった作品を調べたら
「ケータイ小説みたい」というレビューが多数。
しかも上下巻、う~ん、読むべきか否か・・・・


'12 1 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2012-01-19 18:10 | ブックレビュー

暗闇で踊れ / 馳星周

今回も残念!初期作品群の強烈な魅力はもう戻らないのか?

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「氷のザキ」と異名をとる警視庁三課の神崎。
高価な古美術品が大量に市場に流出していることを知った神埼は
事件の臭いを感じ、コレクションを次々と手放している老富豪を訪ねる。
老富豪・井上は天涯孤独なはずだったが、
最近になって妾に産ませたという子供が現れたという。
その子供とは榊田恵と学の姉弟。
彼らが古美術品を骨董屋に持ち込んで売っていたのだ。
二人は井上の屋敷に住み込み、老いた井上の介護をしていた。


ここのところ不作続きだっただけに、かなり期待して読んだ新作だが結果は・・・・
人を騙して金を搾り取ることしか生きる術を知らない
生まれながらの詐欺師姉弟と彼らを追う刑事。

姉の恵は、神崎の若い相棒である水沢刑事曰く
「男が百人いたら、百人がヤリたいと思う女」だそう。
すげー(笑)映像化されたら誰が演じるんだろう?

美人でスタイル抜群、砂糖をまぶしたような甘い声で歌うように喋る女。
そんな恵のベタすぎる色仕掛けにコロッとやられる神崎刑事。
なにが「氷のザキ」だよー?って失笑・・・

詐欺師姉弟の壮絶な生い立ち、過去の「仕事」、詐欺のテクニックなどは
けっこう読みごたえがあるし、普通におもしろく読める。
とはいえ、昔の馳作品を知っているだけに

ひとこと「粗い!」書き飛ばしてる感ありあり・・・

再び「不夜城」や「謝肉祭」のような興奮を味わわせてくれることがあるのだろうか?


'12 1 ★★★☆☆
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by Gloria-x | 2012-01-18 18:03 | ブックレビュー