土曜日/イアン・マキューアン

c0008209_13284725.jpg原題:Saturday
ロンドンに住む優秀な脳外科医ヘンリーは、ある土曜の朝4時、不思議な多幸感に包まれて目を覚ます。幸福な気分のまま窓辺に立った彼は、炎上しながらヒースロー空港へ向かう飛行機を目撃する。彼の脳裏に9.11の記憶が蘇り・・・

妻は出版社の顧問弁護士、長女はオックスフォード卒で権威ある賞を受けた有望な詩人、
長男はブルース・ミュージシャン。ロンドン市内の立派な邸宅に住み、おまけに妻の父は高名な詩人でフランスのシャトーを所有している。

主人公の属する世界のあまりにものパーフェクトさ!
生まれ変わったらこんなお家のコになりたい・・・というのはさておき、
ある土曜一日の出来事を主人公の視点から描いた長編小説なので、所々でかなり冗長!
特に主人公の思考があちこちに飛び、飛んだ先々の描写が必要以上に詳細かつ観念的なので、途中で何について語っているのか焦点がボヤけ、読みながら何度か気が遠くなった。
もう少しタイト&シンプルにできなかったのだろうか?

途中でくじけそうになったが、あまりにも執拗な描写はサーッと流して読むと、
逆に素晴らしい部分がクローズアップされて心に沁みてきた。


「大きく考えるほど、つまらなく思える」には共感。息子のシーオはこう語る。
「政治や地球温暖化、世界の貧困という大きい話をすると、何もよくならないし未来なんかないというようなほんとに嫌な気分になる。でも、スノボとか最近知り合った女の子とか、小さなことに絞って考えるとすごく楽しい。だから俺のモットーは小さく考えろ」
わたしもたまに個人レベルで地球環境などについて真剣に考えなきゃいけないんだろうなーとは思うものの、そういうことを考えるとほんとに悲観的になり、特に日本の政治に考えが及ぶとお先真っ暗な気分になるのでわざと「なんとかなるよね」と思い込んでいるので・・・

娘デイジーに祖父が施した文学的教育や、デイジーの受賞をめぐる事件はエキサイティングで読み応えがあり、痴呆症の母を施設に訪ねた主人公が若い頃の母を追想する箇所は美しかった。あと、バクスターという男の病気が興味深い。

'08 7 ★★★☆☆
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by gloria-x | 2008-07-23 14:21 | ブックレビュー