映画篇/金城一紀

年間300本以上の映画を観るという金城一紀の最新作。
映画好きな人なら絶対に楽しめること請け合い、
小説としても文句のつけようのない傑作である。

映画をテーマにした作品を書こうと考えた時、
著者の頭に浮かんだのは「ショート・カッツ」や「マグノリア」のような、
いくつかの短いストーリーと、それに登場するキャラクターたちが微妙に交錯しながら、
やがてはひとつの大きなストーリーへと収斂していくある種の群像劇だったという。

「太陽がいっぱい」「ドラゴン怒りの鉄拳」
「恋のためらい/フランキーとジョニー もしくはトゥルーロマンス」
「ペイルライダー」「愛の泉」

映画のタイトルをそのまま拝借した5つの物語から成る短編集で、
ジャンルの違うそれぞれの話が少しずつリンクし、
各篇の主要キャストがお互いはまったく知らないまま
最後の物語で同じ場所に集まるという構成が洒落ている。
また、登場人物たちの会話などで作中に96本もの映画が登場するのも楽しい。

作中「ショーシャンクの空に」について読み解く箇所がある。
以前、わたしが参加していた小説の勉強会で
同作品が取り上げられたことがあり、
数々の隠喩が散りばめられた奥深い作品だと知った。
特別な知識や教養がない人が普通に観ても感動でき、
知っているとさらに楽しめる。
小難しい理屈や凝った映像で芸術的に見せかけた映画に比べ、
それってすごいことだとあらためて感心。
金城一紀作品についても同じことが言えるが、
真の大物が概して腰が低く、一見すごそうに見えないのと同じだなぁと納得。


「太陽がいっぱい」は著者の自伝的要素を強く感じる作品で、
帯のキャッチコピー「現実よ、物語の力にひれ伏せ」の意味が
わかったとき、思わず泣けてしまった。

「ペイルライダー」は黒いレザースーツに身を包み、
ハーレーダビッドソンに乗った謎の人物のキャラクター設定が最高!
常にページターナーでありたいと語る著者ならではのアイデアの勝利だろう。

'07 8 ★★★★★
[PR]

by Gloria-x | 2007-09-06 21:56 | ブックレビュー