キング~罪の王~ THE KING '05(米・英)

c0008209_14451171.jpgとても純文学的な映画である。
アメリカの文学賞なんかを受賞した原作小説がありそうな話だがオリジナル脚本らしい。
タイトルと主役のガエル・ガルシア・ベルナルの顔で
アメリカ映画(しかもテキサスが舞台)
とは夢にも思わなかった。
ラブシーンも殺人シーンさえも最小限のセリフと場面転換で
静かに流れるように進行するが、
描かれている内容は凄まじくそして哀しい。


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海軍を除隊した青年エルヴィスは名前しか知らない父親に会うために
テキサスの小さな町の教会を訪れる。
しかし、成功した牧師デヴィッドはエルヴィスが母親の名前を出すと
顔色を変え「わたしの家族に近づくな」と釘を刺す。
おとなしく引き下がるエルヴィスだが、ピザ配達の仕事をみつけて町に居つく。
そしてデヴィッドの娘、つまり腹違いの妹であるマレリーに近づく。

エルヴィスがマレリーを誘惑したのは計画された復讐だったのか、
それとも彼自身も流されるように関係が深まっていったのか、
どちらともとれるようなガエル・ガルシア・ベルナルの
感情を抑えた、それでいて思いつめたような表情から目が離せない。
マレリーを演じるペル・ジェームズは薄幸そうなルックスで、
悲劇的な出来事が待っているのは明らかなのに、
2人が川で遊んだり、愛し合うシーンはとても美しい。

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デヴィッドが牧師を務める教会というのが、
大きな道路沿いに電光掲示板で礼拝の広告を流したり
息子のロックバンドの歌に合わせて礼拝したりと
こういう教会はアメリカでは珍しくないのかもしれないが
なんとなく新興宗教っぽく胡散臭い印象だ。
家も牧師の住まいとは思えないゴージャスさだし、
デヴィッドは聖職者というより宗教をビジネスと考え、
たまたま当たった男のようである。

エルヴィスがマレリーにライフルの持ち方を教えたり、
デヴィッドと息子ポールが鹿狩りに出かけたり、
ポールがいなくなると、身代わりのようにデヴィッドがエルヴィスに弓矢を教えるなど、
静かな中に常に暴力の気配が潜んで緊張感を高めていく。
鹿狩りの後、ガレージで皮をはいだ鹿をマレリーがバケツに無造作に
放り込んでモップで床を掃除するシーンはショッキング!

そして強烈に衝撃的で哀しいラストへ・・・

'07 8 DVD ★★★★★
監督:ジェームズ・マーシュ
出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、ウィリアム・ハート、
   ペル・ジェームズ、ポール・ダノ
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by Gloria-x | 2007-08-19 14:46 | 映画レビュー