明日の記憶 '06(日)

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いろんな意味で辛い映画だった。
どうしても、自分自身や夫婦の将来に引き寄せて観ざるを得ないテーマだから。

46歳で若年性アルツハイマーと診断された働き盛りのサラリーマン(渡辺謙)と、
夫を支える妻(樋口可南子)の日々を描いた感動作。

ほんとはこんなもんじゃない、と思う。
夫は大手広告代理店の部長で妻は専業主婦。
都内に一戸建て&3ナンバーの車(たぶん)を所有。
ひとり娘の結婚も決まって悠々の暮らし。
夫の病気が発覚しても、夫婦揃って
陶芸教室へ通うほどいろんな意味での余裕がある。

いよいよ病気が進行して夫が退職せざるを得なくなると、
妻は昔の友人を頼って職を得るのだが、
陶器のギャラリー&ショップでこれまた優雅。
けっして近所のスーパーでレジのパートなどではないのだ。

フルタイムで働き、家事も全部やり、
もちろんアルツハイマーで目を離せない夫の世話をしていても
妻も家の中も「家庭画報」のグラビアみたいに美しい。

最初はその「キレイごとっぷり」が気になったが、
観ているうちに逆にこれでいいのだと見方が変化した。

この映画が描きたいのは病人を抱えた悲惨な生活のリアルさではない。
誰もがこうなる可能性を持っていることを知らせ、
そうなった時にどう生きていくのかを
自ら問いかけ、考えさせるのが狙いだからだ。

現に、観る前は
「俺が(わたしが)アルツハイマーになったらちゃんとケアしてくれる?」
「当たり前やん、優しく世話するよ」
なんてじゃれあい気味の会話を交わしていたわたしたち夫婦も、
感傷後はどすーんとシビアな気分になり、軽口を叩く余裕ゼロ。

お互い、相手がもしそうなったら、
自宅で自分で介護しようなどと思わず、
しかるべき施設に入れて介護はプロに任せ、
その分頻繁に会いに行き、健康な時と同じように
愛情を持って楽しい時間を共有する、と決めた。

それこそキレイごとかもしれないけど、
ケアする側が、肉体的だけでなく精神的に
想像を絶するような地獄を見ることがわかったからだ。
それによって相手への愛情が壊れていくくらいなら、
過酷な部分は他人の手に委ね、
お互いは愛し合ったままでいるほうがいいというのが
今の時点でのわたしたちの結論。

しかし、それを実現するためには・・・

「やっぱり最終的にはお金やね」
思わずつぶやいた超リアリストのわたしに、
ロマンチストのダーリンが若干引いたようで気になるけど・・・


樋口可南子がこんなに演技の上手い女優だとは知らなかった!
わたしがアカデミー賞選考委員だったら絶対に主演女優賞をあげるだろう。
(日本アカデミー賞とかは受賞しているのかもしれないけど)
最近の日本映画に多い「難病モノ」にありがちな
若い俳優たちの薄っぺらな泣かそう演技ではなく、
複雑な感情を豊かに映す見事な表情演技に思わず泣かされた。

同時に、自分は天地がひっくり返ってもこんな妻にはなれない、
でも、男だったらこんな奥さんが欲しい、と痛感した。

医師役の及川光博もうまい。

'07 7 DVD ★★★★☆
監督:堤幸彦
出演:渡辺謙、樋口可南子、坂口憲二、吹石一恵
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by Gloria-x | 2007-07-16 20:58 | 映画レビュー