夫の彼女/藤堂志津子 幻冬舎

結婚5年目、33歳の涼紀はある日突然、夫の典比呂にこう言われる。
「おれを独身にもどしてくれないかなぁ・・・」
自分は結婚に向いてないことがわかったという夫は重ねて
「おれが好きなのは女より若い男だから」とバイセクシャルであることを告げる。
そして彼女とはいいともだちでいたいと言い出すのだった。

主人公の涼紀は自分の平凡な容姿にコンプレックスがある。
一方、ルックスがよくて女にモテる典比呂は女性の外見には関心がなく
「おれは女の外見にはこだわらない。見てくれなんてすぐに飽きるからね」と
口に出すのが、涼紀への最大のほめ言葉だと純粋に思っている。
涼紀はそのたびに小さく傷つき、嘘でもいいから夫に
「きれいだよ」「可愛いよ」と言ってほしいと思っている。
こういう微妙で説得力のある心理描写がうまい。

登場人物たちはかなり個性的なキャラクター揃いなのに
嫌味がなく魅力的で、行動やセリフに違和感がない。
特に、涼紀がパート先で知り合い、後にいっしょにバーを始める
ヒトミの存在感がいい味を出している。

著者の名前だけはずっと知っていたが、
もっとある意味「女っぽくて濃い恋愛小説」を書く人というイメージがあったので
このドライで軽やかな作風はいい意味で意外だった。
しかし、一見とっつきやすいカジュアルさは
真の才能、筆力に裏打ちされたものであることが伝わってくるのがすごい。

一流シェフが最高の食材を使って時間と手間をたっぷりかけて作った
コンソメスープというところか。

'04 12 5/5段階評価★★★★★
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by Gloria-x | 2004-12-11 19:48 | ブックレビュー