初恋 '06(日本)

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三億円事件の実行犯は女子高生だった・・・
日本犯罪史上最大のミステリー
「府中三億円強奪事件」の隠された真実と、
そこに至る青春群像を描いた物語。

1968年に起きた三億円事件のことはおぼろげに記憶に残っているが、
わたし自身のリアルタイムの記憶というより、
その後、何十年にも渡り繰り返し報道されたり、フィクションの題材として取り上げられたものを見聞きして得た情報だろう。

当時わたしはまだ幼かったが、
大阪万博を控えて国が急速に発展していくパワーと、
一方で大学紛争など若者の間に充満していた暗く鬱屈したエネルギーの
入り混じったこの時代の日本の空気は確かに肌で覚えている。
その頃を振り返ると、三億円事件、浅間山荘事件、よど号ハイジャック事件
などが年代もバラバラに蘇ってくる。
わたし自身の子供時代の記憶も含め、
時代の印象はグレーで重くうっとうしい。

子供のくせに先に待ち受けている未来に「なんかしんどそう・・・」と
ぼんやりとした疲弊感を抱いていたことも覚えている。

学生運動については大人になった今もよくわからないが、子供心にも
「なんで若者っていつも怒って暴れるのだろう?」と不思議に思っていた。
そして「わたしも「若者」と呼ばれる年齢になったらこんなことをするのだろうか?なんかイヤだなー」と漠然と、しかしピンとこないまま考えていた。

映画は当時の空気を見事に再現していると思う。
(当時、若者だったり大人だった人から見ればどうかわからないけど)
しかし80年代に若者だったわたしから見れば
世間から「不良」と呼ばれていた当時の若者たちの姿はとても不思議。

ジャズ喫茶に入り浸り、ドラッグ(ヒロポンとかいうもの?)をやる一方で
酒も飲まずコーヒーだけで朝まで青臭い政治論や芸術論を熱く語り合う。
真面目なんだか不良なんだかどっち?って感じ・・・
わたしより5歳若いダーリンなど、この時代については完全に門外漢で、
「えー!ジャズ聴いたら不良やったん?」と失笑する始末・・・

不思議だったのは水商売の女の部屋で一夜を過ごした若者たちが
女が寝ている間にこっそり出て行くと、気づいた女が二階の窓から
「ちょっと!」と呼び止めるところ。
てっきり「お金くらい置いていきな!」と怒るのかと思いきや
おこづかいを放り投げてあげるのだ。
うーん、当時の風俗や倫理観がわからん・・・

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日本犯罪史上最大の未解決事件といわれているが、
正直言って「えー?こんなに簡単にやられちゃったの?
当時の危機管理意識って恐ろしく低かったんだなぁ」と呆れるほど驚いた。
今なら個人預金を降ろした銀行帰りの主婦だってもっと厳戒態勢だろう。
それがいいことなのかどうかは別として・・・

前半はあまりにもテンポが緩やかだなので正直ちょっとダルいが、
当時のラジオニュースのアナウンスが流れるシーンになると
「ああ、こんなにもゆっくり喋ってたのかー」と気づく。
ラジオだけでなく、人々の会話や感情の動きも今よりもっとゆっくりで、
その分、深さや重みがあったような気がする。
そして、映画はわざとそのテンポに合わせて作られていることがわかる。
主演の宮崎あおい以外はほとんど知らない顔だったが
それがかえってリアルさの一助になり、味わい深く見ごたえがあった。
資料を見ると最近の日本映画やドラマで活躍している人気俳優たちらしいが、
「今のタレントが時代モノやってます」という浮いた感じがなかったのは感心。
また「大人」と呼ばれる役柄に有名な役者を起用せず(藤村俊二以外)、
それどころか顔もはっきりと映さないという演出には唸った。


'07 5 DVD ★★★★☆
監督:塙幸成
出演:宮崎あおい、小出恵介。宮崎将、藤村俊二
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by Gloria-x | 2007-05-25 23:16 | 映画レビュー