東京タワー オカンとボクと時々オトン '07(日本)

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息子って可愛いんだろうなぁ・・・
わたしは三姉妹+末っ子弟の4人姉弟で、母はわたしが子供の頃から
「男の子がこんなに可愛いなんて想像もしなかった。娘とは全然違う」と言い切っていた。
わたしは母とあまり相性がよくなく、子供の頃は天敵とさえ思っていたが、
それを聞いて弟に嫉妬するなんてことはなかった。
ただ、母親の息子に対する愛情というものに好奇心をそそられたのは確かだ。
今でも母は話題が弟のことになると顔がパッと輝いて生き生きし、
その半分、いや十分の一でも父に向けてあげたらと思うほど・・・

わたし自身は子供を持たないと決めているが、
ふと、ダーリンのレプリカみたいな息子だったら欲しいかもなぁと思うこともある。
しかし現実には夫の遺伝子だけを受け継いだ子供を産むのは不可能だし、
たとえ容姿も性格も夫にそっくりの息子が生まれたとしても、どう育つか保証はない。
仮に息子がものすごく可愛くて、夫への愛情が息子に移ってしまうのもイヤだ。

世間を見渡してみると、羨ましい息子を持つ母親ばかりではない。
他人事ながら「こんな息子なんて最悪!」と気の毒にさえ思うケースもある。
ところが、他人から見れば災難のような息子でも、
その母親にとっては愛しくてたまらないようで、
母と息子の関係ってますます未知の世界である。

リリー・フランキーの原作は、猫も杓子も「泣いた」「号泣した」の大合唱に
半信半疑の構えた姿勢で読み始めたら、ほんとに号泣!
もともとリリーさんのことはけっこう好きだったが、
これを読んで、人間的な面ではさらに好感度が上がったものの、
男性としては残念ながらかなり引いてしまったという複雑な結果に・・・

映画の公開がらみのインタビューでリリーさんが
「女の子と話してて、わたし母親とは仲が悪いから、とか言うコがいるけど
その時点でもうダメですね。そんな女とは絶対つきあえない」
みたいなことをおっしゃってた。
作家なのに想像力欠如だなぁ、と思った。
母と娘って根本的に母と息子のわかりやすく美しい関係とは違って
男には思いもよらないどろどろした確執ってものがあるんですよ・・・
ま、そんなデリケートなところに思いが及ばないほど
筋金入りのマザコンなんでしょうね。ある意味羨ましい。
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肝心の映画はどうだったかというと、予想に反してまったく泣けなかった。
オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子、小林薫らの演技は見事だし
映像の質感や当時を再現したセットも素晴らしい。
ところが、わたしにはどうも「ほら、泣けるでしょ?」「ここが泣きポイントですよね?」と
これでもか的な演出に思えて逆にどんどん冷静になっていくのだった。
とはいえ、映画の出来が悪いわけではないし、
役者たちの演技に「泣かそう」という不要な意図を嗅ぎ取ったわけでもない。
いっそ原作を読んでいなければダイレクトに琴線に触れたかもしれない。

樹木希林はすごい!
オカンが乗り移った、いや、本人そのものとしか思えない存在感である。
オカンの若い頃を演じる内田也哉子(樹木希林そっくり!)の演技は初めて観たが
妙にアンニュイな色気が漂っていてよかった。
この2人が演じるオカンを観て、あらためてオカンの魅力がわかった。
夫は一家の主の自覚ゼロ、息子は母親のスネをかじり続けと
2人の男のために苦労の連続なのに、
オカンにはいわゆる演歌の世界風な哀しさや湿度がなく、
時に飄々と、時には悟りきった境地さえ感じる。
女にありがちな、自分で自分の不幸に酔いしれる
ヒロイン願望的要素がみじんもないのだ。
だからこの物語が基本的に誰もがマザコンだという世の男性だけでなく、
同性に厳しい女性の心も掴んだのだろう。


そして、小林薫よかったー!
現実にあんな男が父親や夫だったら大迷惑だが、
彼が演じるオトンはひたすら魅力的である。

オダギリジョーのリリーさんを彷彿とさせる着こなしも◎。
中高校生時代を演じた冨浦智嗣が仔犬ちゃんみたいで可愛かった♪

'07 4 19 劇場 ★★★☆☆
監督:松岡錠司
出演:オダギリジョー、樹木希林、内田也哉子、小林薫、
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by Gloria-x | 2007-04-20 19:59 | 映画レビュー