海辺のカフカ/村上春樹

村上春樹お得意のパラレルワールド。
わたしはファンタジーは大の苦手だが、
なぜか彼の作品だと突拍子もない設定や展開も
比較的抵抗感なく受け入れてしまうのが不思議。

15歳の誕生日に家出した田村カフカと名乗る少年と、
猫と喋ることのできる知的障害者の老人ナカタさん。
別々に進行する接点のない2人の物語がやがてひとつにつながっていく。

カフカが寝泊りさせてもらう「甲村図書館」が非常に魅力的な場所である。
物理的に快適な空間であることももちろんだが、
彼を無条件に温かく受け入れ、しかも必要以上に詮索せず、
そのうえかなり高度な知的刺激を与えてくれる人物までいる。
自分自身の思春期~若い頃を振り返ると、精神的にハードだった時期に
あんな場所でひっそりと過ごせたらよかったなぁと羨ましい。

ナカタさんを車に乗せてやったことがきっかけで
高松での不思議な日々を共に過ごす星野という青年のキャラクターがいい。
腕のいいトラック運転手だが、漫画雑誌くらいしか読まない無教養な彼が
なんとなくトリュフォーの映画2本立てを観たり、
ふらりと入った喫茶店で聴いたベートーヴェンにハマったり、
知的な覚醒をしていくあたりがエキサイティングでおもしろい。

カフカと図書館の責任者・佐伯さんの関係がこの小説のメインストリームなのだが、
正直言って読んでいて生理的に心地よくないし好きではない。
佐伯さんという女性のキャラクターはいかにも村上春樹らしい女性である。
それにしても、村上春樹ってほんとに博学ですなぁとやや鼻につくほど感心。

'07 4 ★★★☆☆
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by Gloria-x | 2007-04-16 12:48 | ブックレビュー