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いつか晴れた日に/Sense and Sensibility '95(米・英)

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原作はジェーン・オースティンの小説「分別と多感」。
18世紀の英国、一家の主を亡くした女家族の
対照的な性格の長女と次女の結婚問題に
当時の上流社会の慣習や人間模様をからめて描く。

主演のエマ・トンプソンが脚本を書いているのだが、
アカデミー脚色賞を受賞しているだけあってお見事!
一見古臭く退屈そうな話なのに、巧みな心理描写を駆使した軽妙かつムダのない展開にぐんぐん引きこまれていく。

当時の英国では、女はとにかく若いうちに財産がある男性に見初められて
生活の安定を確保することこそが命題って感じでしんどそうー。
でも、女の適齢期は短く、好条件の男がゴロゴロいるはずもなく、
「分別」の長女(エマ・トンプソン)が恋心を隠してためいきまじりに家事に専念したり、
「多感」の次女(ケイト・ウィンスレット)が情熱を持て余して
見渡す限りの丘陵に立ち尽くすシーンの心情を察すると
あのブロンテ三姉妹がそろって生涯独身だったのもうなずける・・・

エマ・トンプソン×ヒュー・グラント、ケイト・ウィンスレット×アラン・リックマン。
エマ×ヒューって見た目には絶対エマが年上だと思うんだけど
実際にはどうなのだろう?
ラヴ・アクチュアリーではヒューの妹役という設定で、
「えー!どう見ても姉やろ、姉!」と違和感覚えたものだが、この作品でも
ヒュー扮するエドワードがエマ扮するエリノアを「妹のように大切に思っている」という
表現が出てきてこれまた「姉のように慕ってる、ちゃう?」と心中でツッコミを入れた。

エマ・トンプソンは女としての魅力は感じないが演技面では言うことなし。
手堅いというか、彼女の名前がキャストにあるだけで信用度アップという面で
わたしの中ではローラ・リニー、グレン・クローズと同列。

アラン・リックマンは卑劣で冷酷な役も上手いが、こういう不器用で誠実な役もいい。
枯れかけた大人の抑えた色気が漂っていた。
残念ながらわたしは年下好きなのでピンとこないけど、こういう
お金持ちの年上の男性に優しく守られる結婚生活って女にとって理想だろうなー。

ケイト・ウィンスレットも上手いねー。
華のある美人なのに大地に根ざしてる安定感があって
体温とか汗や涙がリアルに感じられる女優だ。

ヒュー・グラントって猫背?
立ち姿が、服の衿を後ろから引っ張り上げられてるように不細工だったけど・・・・

そして映像が素晴らしい!アン・リー監督はこの作品が欧米進出一作目とか。
ブロークバックマウンテンの時も感心したけど、台湾人とは信じられないほど
自然にイングランドの田舎の空気感を伝えてくれるし、
室内シーンは構図や光線がちょっとフェルメールの絵画を思わせる。
余談だけど、アン・リーって名前は発音的に欧米人にも馴染みやすくて
いいんじゃないかしら?(女性名みたいだけど)

こういう話は役者の技量にかかっていると思うが
主要キャストは安心して観られる実力派だし、脇役も芸達者揃い。
個人的にはジェニングス夫人役の「あんなおばちゃん、日本にもいるいる!」
と笑わせてくれる「表情小芝居」が気に入った。
みなさん、ほんのわずかな表情の動き、声のトーンで、
胸の内やその場の空気を的確に表現してくれるので
けっこうややこしい人間関係や現代の基準では理解しにくい状況もすんなり納得。

'07 4 10 WOWOW ★★★★☆
監督:アン・リー
出演:エマ・トンプソン、アラン・リックマン
   ケイト・ウィンスレット、ヒュー・グラント

by Gloria-x | 2007-04-12 16:38 | 映画レビュー