タッチ The Touch/ダニエル・キイス

彫刻家のバーニーは大手自動車会社の
デザイン部門で車の造型モデル制作をしている。
結婚4年目のバーニーと妻のカレンは不妊に悩んでいて、
カウンセリングなどあらゆる方法を試みているが
まったく成果がなく夫婦仲もぎくしゃくし始めていた。

そんなある日、バーニーの勤務先で放射能漏れ事故が発生。
放射線技術者マックスと同じ車で通勤していたバーニーは
マックスの衣服に付着した放射能ちりで汚染され、
気づかないうちに汚染を自宅やカレンに広めてしまう。
そして、皮肉なことに汚染が発覚してから
カレンは妊娠していることに気づく。

吐き気、火傷、倦怠感、全身衰弱、視力の衰え、頭髪の脱毛、
将来発病するかもしれない癌への恐怖・・・
若い2人を襲う身体的被害はもちろん、
汚染を知った周囲の人々からの差別やいやがらせ、脅迫、
無責任なマスコミ報道によって世間から孤立していく過程が怖い。

'60年代に起きた事件に基づくフィクションで、
'68年初版作品を作者自ら改訂して'03年に出版。
初版から30数年の間に世界中で起きた
放射能事故のニュースが付録として加えられている。
メリル・ストリープ主演で映画化された「シルクウッド」事件など
政府や企業という大きな力による隠蔽も恐ろしいが、
エジプト、タイ、フィリピン、ブラジルで起きた事故は
放射能などとは無縁な一般人が偶然と無知によって汚染、
彼らの無自覚が家族や近所に汚染を広めて死者が続出。
自分もこんな被害に巻き込まれる可能性があることを考えると戦慄する。

'07 3 ★★★☆☆
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by Gloria-x | 2007-03-26 01:26 | ブックレビュー