わたしを離さないで Never Let Me Go/カズオ・イシグロ

柴田元幸氏が解説でこう述べている。
「これまでのどの作品をも超えた鬼気迫る凄みと
逆説的な普遍性を獲得している。
その達成度において、現時点でのイシグロの最高傑作だと思う」

カズオ・イシグロは好きな作家の一人でデビュー作から読んでいる。
前作「わたしたちが孤児だったころ」は個人的にイマイチだったので
この新作を読むのはちょっとドキドキだったのだが
見事にノックアウトされた。
いや、正しくはじわじわ、ひたひたと水が浸透するように
ゆっくりと作品世界に引きこまれていき、
最後に感情を大いに揺さぶられた(しかも静かに)
という感じ。

広義のS.Fと言ってもいいのだろうか?
柴田氏も書いているように「ものすごく変わった小説」であり
「予備知識は少なければ少ないほどよい作品」なので
内容について語れないのが残念だが、
大昔に読んだマーガレット・アトウッドの「侍女の物語」を思い出した。

静かな語り口と丹念な情景・人物描写がかえって
登場人物たちの想像を絶する過酷な運命と悲しみを際立たせてよかった。

唯一、個人的に違和感を感じたのはトミーの喋り口調の訳文。
少年時代から無骨な中年みたいな口調なので
彼のキャラクターが掴みにくく、魅力が半減して感じた。

発表されたその年に「タイム」誌の
文学史上オールタイムベスト100に選ばれたそうだが、納得。
こういう小説こそほんとに「泣ける本」だと思う。

'07 2 ★★★★★
[PR]

by Gloria-x | 2007-02-23 20:41 | ブックレビュー