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愛と哀しみのボレロ/ Les uns et Les autres '81(仏)

いい映画は何度観てもいい!
ラヴェルの「ボレロ」で始まり、ジョルジュ・ドンが踊る「ボレロ」で終わる3時間、
フランス、アメリカ、ドイツ、ソビエトの4ケ国を舞台に
エディット・ピアフ、グレン・ミラー、カラヤン、ヌレエフを思わせる人物をモデルに
彼らとその家族の45年にもわたる波乱万丈な人生を描いた壮大なドラマ。

公開当時に観たときは物語のドラマ部分のスケールに圧倒されて感動した。
その後何度も見直しているが、今回は特に映画的描写の見事さに唸った。
ルルーシュ監督の意図は「音楽とサイレント映画の長所の結合」。
一つの曲が流れる中、可能な限りセリフを省いて物語が展開していくのだが、
ミュージカル的でありながら、わたしが苦手な「必然性のないミュージカル」ではない。
誰かと誰かが惹かれあい、愛し合い、結婚し、子供ができる。
あるいは戦争によって引き裂かれる。
それをひとつの曲にのせてたった数秒のシーンで説明し、
物語が見事に流れていく技は鳥肌モノ!
またラストは「ボレロ」一曲丸ごとを使ってそれぞれの人生模様を見せつつ
フィニッシュに持っていく展開が気持ちいい。

登場人物が多く、一人の俳優が親子二役や三役を演じたりしているので
人によっては混乱するかもしれないが、
別の国で第二次世界大戦に巻き込まれて苦難の人生を歩んだ人物の子供や孫たちが
パリ・シャイヨー宮で行われるチャリティーイベントで同じ舞台に立つという
運命の数奇なめぐり合わせにはカタルシスさえ覚える。

最初に観てから20年が経っているので、当時ピンとこなかった男女間の機微もわかるし、登場人物への感情移入の仕方なども変化しているのが我ながらおもしろかった。
今回はドイツ人指揮者・カール・クレイマーとその妻の人生が印象的だった。

唯一、ピアフを思わせるシャンソン歌手の娘エディットのキャラクター及び
描かれ方だけは昔も今も納得できない。
田舎から出てきて歌やダンスの素養はもちろん、なんのコネもない若い娘が
TVに出るダンサーになり、アナウンサーとして抜擢されるのは
あまりにもリアリティなさすぎ!
せめて亡き母の影響でダンサーをめざしてパリに出たとかいう設定にしてほしい。

監督:クロード・ルルーシュ
出演:ジェームス・カーン、ジェラルディン・チャップリン、ロベール・オッセン、
    ニコール・ガルシア、ジョルジュ・ドン、ダニエル・オルブリスキ、マーシャ・メリル

by Gloria-x | 2004-12-09 14:23 | 映画レビュー