月と菓子パン/石田千

ちょっと幸田文か向田邦子を読んでいるような錯覚が起きる、
昭和の匂いが郷愁を誘うエッセイ集。
著者のことを知ったのは角田光代の対談集。
角田さんが「本を読んでもっと年上の人かと思っていた」と
言っていたとおり、'68年生まれの人とは思えない世界だ。

質素というかシンプルというか、著者のライフスタイルは
現代の東京に暮らす30代女性とは信じがたいほど。
古い町並みを散歩し、商店街のコロッケ屋で買い食いし、
銭湯にいき、豆腐屋めぐりをし、野良猫にエサをやり、古着屋が好きで、
最近流行りのではなく正真正銘の立ち飲み屋で一人熱燗を飲む。

自分とはまったく違うタイプのひとだなあとつくづく思うが、
酒飲みで日々の食事を大事にしているところに親近感を持った。

~夏のあいだじゅう、夕暮れになると、
  水元の枝豆でビール、と思いつめて家路を急いだ。~

わたしもしょっちゅう「合鴨でカベルネソーヴィニヨン」とか「海老でシャルドネ」と
思いつめて自分を励ましながら仕事してるので、同類だ、と嬉しくなった。

著者の祖母とその姉妹が毎年末に集まって餅をつくる「まるいおもち」
酔って帰る途中、小学校の前にゴミとして出されていた木の椅子を
もらって帰る「春雨泥棒」が好き。

'06 11 ★★★★☆
[PR]

by Gloria-x | 2006-11-13 20:11 | ブックレビュー