人気ブログランキング | 話題のタグを見る

イン・ザ・ベッドルーム/In The Bedroom '02(米)

メイン州の小さな町に住むファウラー夫妻。夫マットは医師で妻ルースは音楽の教師。
二人の間には大学で建築を学ぶ一人息子フランクがいる。
夏の間、学費稼ぎのアルバイトのために帰省していたフランクは
近所に住む年上の女性ナタリーとつきあっていた。
ナタリーは暴力夫リチャードと別居中で、2人の幼い息子はフランクになついている。
ファウラー夫妻はナタリーとフランクの交際に複雑な思いを感じながらも
フランクの意思を尊重して理解を示し、
ナタリーや息子たちとも家族ぐるみでつきあっていた。
そんなある日、ナタリーとよりを戻そうとするリチャードがフランクを殺してしまう。

これが初監督作品とは思えない上質で完成度の高い作品。
抑えたタッチの演出と俳優たちの見事な演技で深く静かにメッセージを伝えてくる。
アメリカの小さな田舎町の地味で堅実な生活、
地域社会を大切にする普通の人々の暮らしぶりが淡々とていねいに描かれているだけに
意外な結末の印象が際立ち、多くのものを問いかける。
アメリカ人といえば常に自分の意見をはっきりと表現し、
個人の権利を強く主張する人種という認識があるので、
この映画に出てくる人々の奥ゆかしさ、家族や他人へのデリケートな気遣いぶりは
かなり意外。日本人に共感しやすい作品だと思う。

子供の意思を尊重し、物分りがよすぎる親というのもどうなんだろう?
反対すればかえって息子の恋が暴走するのを恐れたのかもしれないが、
ファウラー夫妻は医師と教師。インテリで地域社会でもそれなりの地位と尊敬、
信頼を得た立場だけに個人的感情や偏見を表すのはもちろん、
持つことさえ意識的に抑えていたのだろう。
彼らがあまりにも出来すぎた人たちなので途中でややイライラするが、
悲しみや苦しみが限界に達し、ついにお互いを責めるシーンで
観客も初めて心の解放を感じるという演出は見事だ。
(物足りないくらい上品で知的なののしりあいだけど)
マリサ・トメイは女性としての魅力や若さを十分持ちながら、
子育てに苦労して生活感が仕方なくにじみ出てしまう役をリアルに演じていた。

'04 1 20 ビデオ 5段階評価★★★★
監督:トッド・フィールド 
出演:シシー・スペイセク、トム・ウィルキンソン、マリサ・トメイ、ニック・スタール

by Gloria-x | 2004-12-09 00:54 | 映画レビュー