夜の電話のあなたの声は /藤堂志津子 文藝春秋

短編3作の主人公すべて、どちらかといえばイヤな女で好感がもてないのだが、
状況設定と展開の巧みさ、心理描写のうまさには毎度のことながら脱帽。

「雨の夜にホテルへ」
男になんの前ぶれもなく一方的に電話で別れを告げられ、
以来、統子は既に男が引っ越したあとのアパート近くまで
行っては道にすわりこみ、アパートを眺めながら酒を飲む習慣が・・・

「男のいない男の部屋で」
麻酔医という職業のステイタスだけが理由で、
好みのタイプではなく、つきあうにつれ嫌いになっていく男と
4年間もつきあい続ける早智子。

「夜の電話のあなたの声は」
ハンサムで自信家で女にモテる本条に捨てられた水香は
一度ちらっと後姿を見かけた本条の同僚に狙いを定め、
巧妙に仕組んだ偽の間違い電話をかける。

「男のいない・・・」の主人公・早智子はバイト暮らしからライターになっていく。
自分自身やその生き方に根本的に自信が持てないところなど
この主人公には共感する部分があった(ライターだからというわけでなく)
著者もコピーライター出身なので、作品中に出てくる仕事や人間関係、
早智子に「いっしょに事務所をやろう」と持ちかけるミチル
(この業界によくいるタイプ)の描写などリアルで説得力があった。

~人生設計のようなものなどあるわけがなかった。
 一年先も、一ヶ月先も見えない、行きあたりばったりの生活を、
 かれこれ十年近く送っていた~

~ミチルの明快な生き方がうらやましかった。(中略)
 その前向きな自信はどこからくるのだろう。
 どうすれば、そんなふうになれるのか~

'05. 1 ★★★★★
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by Gloria-x | 2005-01-30 13:33 | ブックレビュー