秋の森の奇跡/林真理子

「東京のそこそこ裕福な家に育ち、エスカレーター式名門私立校を卒業したお嬢様」
林真理子って心底こういう人種に生まれたかったんだろうなぁ。
その後に続く道「経済力のあるエリート男性と結婚し、子供は名門校をお受験させる」
というところを自力で手に入れただけに、どうしても書き換えられない人生の前半を
自分の作品の主人公に生きさせているのかもしれない。

夫は名門私立校の教師、娘は自分の出身名門校の付属小学校。
高級輸入家具店の店長というやりがいのある仕事を持ち、
42歳でもまだ若々しく、時には男から言い寄られることもある。
そんな裕子の人生に、ある日突然降ってわいたのは
夫の浮気疑惑とスキャンダル、痴呆症の母親の介護問題。
精神的プレッシャーから逃れるように裕子は妻子ある男と関係を持つが・・・

裕子は実の母親が痴呆の症状を見せ始めると、
母親と二世帯住宅で同居する兄と対立し、夫と別居してまで
自分で母親の世話をしようとする。
夫と母親を天秤にかければ、文句なしに母親が大事と言い切る
裕子の心境はわたしにはわからない。
こういう感情や感覚というのは理屈を超えたもので、
想像や理解はできても共感は難しい。

わたしは結婚したとき、夫に対して
「彼は何があってもわたしの味方でいてくれる人だ」と生まれて初めて実感した。
同時に、両親に対しては漠然と「自分の味方」だと感じていなかったことが
明らかになってショックも受けたものだ。
著者も実の母との絆が強い人らしいので、
ナチュラルに主人公の心情を描くことができたのだろう。
これはある意味うらやましいことである。

'06 8 ★★★☆☆
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by Gloria-x | 2006-09-13 20:05 | ブックレビュー