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男は敵、女はもっと敵/山本幸久

うまい!スカスカの軽い小説と思って手にとったら嬉しい誤算だった。
男性作家なのに女性キャラクターに違和感がないし、
主役が交代しつつ登場人物が相互にからんで
話が展開する短編形式の構成もよく、笑いのセンスも◎。

誰もが思わず振り返る美人で、しかも仕事ができる
フリーの映画宣伝ウーマン・高坂藍子。
大手広告代理店部長の西村と不倫をしていたが、
西村の煮え切らない態度に見切りをつけ、
彼へのあてつけとして、冴えない男の見本のような
デザイナーの湯川に自分からプロポーズする。

湯川を選んだのは、容姿、年収、学歴、趣味など
すべての面で西村より劣っていたからだ。
しかも湯川はセックスも下手だった。
「僕でいいんですか?」と心底驚いた湯川だが、
内心は「35歳の女性が必死の形相で結婚してくれと嘆願するので
よほど切羽詰ってるのだと可哀相になってOKした」という。

美人のヒロインに嫌味がなく、同性が感情移入できるキャラなのがポイント。
その上、不倫相手の西村の妻、湯川の再婚相手となるデザイナーなど
タイプの違う女性たちのどれもリアリティがあって好感がもてる。

ハナエ・モリの花柄ハンカチ、一澤帆布のバッグなど小道具の使い方も上手。

'06 8 ★★★★☆

by Gloria-x | 2006-08-18 17:11 | ブックレビュー