恋の姿勢で/山田太一

山田太一といえば「ふぞろいの林檎たち」など名作ドラマの
脚本家として有名だが、小説もこんなに上手なのかと感心した作品。

アリゾナで知り合い、東京で偶然再会した日本人男女。

女は34歳シングル。勤務先の商社では周囲の男たちから
結婚できないから仕事を続ける「働き女」と分類されていることを痛感。
自分も結婚できることを証明するために取引先の男の
プロポーズを受けたが破談になる。
それをきっかけに会社を辞め、昔留学していたアメリカへ傷心旅行にやってきた。

男は40代半ば。一目で日本のサラリーマンとわかるタイプではなく、
発音はカタカナだが文法は正確な英語を流暢に話す。
日本人宿泊客は2人だけというリゾートホテルで、
自分に対する反感と警戒心を抱いている初対面の女を
半ば強引に、かつ不器用にナンパして見事に成功する。

スコツデールのリゾートホテル、セドナのメディテーションスポット。
ドライな空気感のある舞台が、ありがちなワンナイトスタンドを陳腐に感じさせず
「つかみ」がうまくて導入部から一気に引き込まれる。
東京での再会からドラマが始まり、なんとなく先が読めた気でいると
思いもよらない展開を見せて飽きさせない。

男性作家による恋愛小説のヒロインとしては珍しい例だが、
ヒロインの客観的でクールな分析(自身の容姿や出来事に対する)と
乱暴な口調の独白にリアリティがあって好感のもてるキャラクターになっている。
相手役の男も下手な作家が書けば陳腐でクサくなるキャラだが
正体不明で危険な魅力を感じさせることに成功している。

恋愛小説は登場人物や出来事が嘘臭くなく、
かつほどほどに非日常的というバランスがポイントだと思うが、
その意味で非常によくできた小説だと思う。

'06 7 ★★★★☆(再読)
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by Gloria-x | 2006-08-02 16:23 | ブックレビュー