国境の南、太陽の西/村上春樹

ひとりっこであることを自身のアイデンティテイとして
幼い頃から強烈に意識し続けてきた主人公。
小学5年生の時にやってきた転校生の島本さんは
幼い頃の病気で左脚をひきずる大人びた少女で、
彼女もまたひとりっこだった。

ふたりはいつしか深く心を通わせるようになるが、
いつの間にか音信不通になってしまう。
やがて、結婚して2人の娘を持ち、上品なジャズバーを
経営するようになった主人公の前に突然島本さんが現れる。

後からじわじわとくる一種の怪談である。
経済的にも家庭的にも恵まれ、成功した人生を送りながら
どちらかといえば禁欲的で俗っぽくならない主人公の一人称で
長い年月をかけて淡々と展開する物語。
その最後に、本人すらそうとは気づいていない精神の歪みと
彼が抱え続ける底知れない欠落感の大きさが恐ろしい。

大人になって主人公が再会する島本さんのキャラクターに
どことなく不自然な印象が拭えず、
好感が持てない女性であったことにラストで納得。

'06 6 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2006-06-18 10:38 | ブックレビュー