アフターダーク/村上春樹

不思議な小説である。
登場人物とはまったく関係のない第三者の視点で描かれていて、
しかもそれが「私たち」と複数になっている。
「私たち」は時空を自在に移動して、登場人物たちの行動を観察している。

なんとなく「ベルリン天使の詩」を思い出したが、
ここでは「私たち」は最後まで登場人物たちと接触することはなく、
あくまでも「観察者」の立場を守っている。

ティーンの頃から雑誌モデルをしている美人の姉エリ。
幼い頃から姉と比べられ続け、そのコンプレックスで
人間関係が不得手になった妹マリ。
姉の大学の同級生タカハシ・テツヤ。

偶然の出会いから展開していくストーリーはシチュエーションごとに
異なる作風を感じさせる。

まるで翻訳小説の会話のようなタカハシとマリのシーンは
村上春樹らしさということで言えば最も春樹らしい。
タカハシの知人であるカオルが登場し、彼女の職場である
ラブホテルで進行する部分を読んでいるときは、
途中で村上春樹を読んでいることを失念したほど。
そして「私たち」がエリを観察するシーンはどことなく
20世紀のSF小説のようなムードを感じた。

'06 5 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2006-06-03 22:13 | ブックレビュー