「寂しい」と「怖い」

20代後半で念願の一人暮らしを実現した。
年上の友人が住んでいた古い建物で、
安い家賃のわりに6畳+6畳+10畳のDK、
バストイレはセパレートと広かった。

友人はイラストレーターという職業柄、質素ながら
パリのアパルトマンのように居心地のいい部屋を作っていて、
遊びに行って一目惚れしたわたしが
「空室が出たら教えて!」とお願いしておいたら
運良く友人の隣の部屋が空いたのだ。

一人暮らしはしたいが、ワンルームは絶対イヤだった。
閉所恐怖症という理由もあるが、
6畳や8畳+ユニットバスみたいな狭い空間で
生活することを想像しただけで発狂しそう。


その頃は若かったので、ワンルーム暮らしの友人もいたが、
たまに遊びに行っても2時間もいると息苦しくなったものだ。
会社勤めで部屋には寝に帰るだけだとしても、
食事も睡眠もくつろぎも、すべてその狭い空間で済ませるなんて
せせこましくて窮屈で息がつまる・・・・

特にわたしはフリーランスで居職だったのでワンルームなど論外。
新築・オートロックでエアコン完備のワンルームか
築ン十年でボロいが広い部屋か選べと言われたら
迷いなく後者派
だったわたしにとって
その友人のアパルトマンは理想の部屋だった。

貧乏だったので、家具や家電などは
友人・知人がいらなくなったものをもらい受け、
子供の頃から夢見た一人暮らしがスタートした。

一人暮らしも軌道に乗り、久々に実家に帰った時、
母に「一人で寂しくならないの?」と聞かれてきょとんとした。
「寂しい」ってどんな感情か思い当たらなかったのだ。

幼い頃から両親、妹たち、弟の他、
実家が自営業だったため住み込みの従業員もいて
わたしはず~っと「プライバシー」というものに餓えていた。
とにかく一人っきりで誰にも干渉されない時間と空間が
欲しくて欲しくてしかたなかった。

ひとりっ子の鍵っ子が理想だったわたしの辞書に
「寂しい」なんて言葉はなかったのだ。

また別のとき、遊びに来た妹に
「夜とか一人で怖くない?」と聞かれてきょとんとした。
「怖いってなにが?」
「おばけ」
「はあ~?」

わたしは現実派なので、ピッキング強盗なんかは怖いし、
都会育ちなので、田舎や郊外の夜道は怖い。
だけど、一人で部屋にいておばけや霊が怖いなんて思ったこともない。
一人暮らしを経験せずに結婚した妹は
その後も夫が出張で不在の夜など、おばけが怖いと言っていた。

わたしは「寂しがりや」でも「怖がり」でもないようだ。

何が怖いかと聞かれれば、貧乏、病気、地震は怖い。

だけど、寂しいという感情はほとんどない。
誰とでも楽しくにぎやかに過ごせるけど、
ひとりでいる時間が大好きだから。

でも、わたしはダーリンに関して冗談みたいに心配性だ。
昔、山田詠美がエッセイでこんな内容のことを書いていた。

「部屋で彼の帰りを待ってると、事故にあったんじゃないか
ケンカに巻き込まれたんじゃないかと心配でたまらなくなり、
自分が出かけていて彼が一人で留守番していると、
エアコンが壁から落ちて彼の頭を直撃してるんじゃないかと
心配で心配でいてもたってもいられなくなる」

これを読んでまるで自分の心を読まれたかと思った。

ある友人に
「浮気してるんじゃないかと心配にならないの?」
と聞かれたときもきょとんとした。
彼女の尺度では男=浮気と疑心暗鬼になるのが常識らしいが
不思議だけど、わたしはそんな心配はしたこともない。

そう答えると友人は信じられないという風に驚いていたが
わたしってきっと「おめでたい」種類の人間なのかもしれない。
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by Gloria-x | 2006-05-25 21:45 | 出来事・世間・雑感