東京奇譚集/村上春樹

ハルキは短編のほうが好き、ということを再確認した一冊。
読み始めた瞬間、抗いがたい吸引力で物語の中に引き込まれて一気に読了。

ハワイで息子を鮫に殺された女性が主人公の「ハナレイ・ベイ」
ハワイ、サーフィン、英語が堪能な日本人という
マテリアルのせいか、的外れかもしれないが
片岡義男の小説を思い出して少し懐かしい気分になった。

それだけでなく、
「村上春樹ってこんなだっけ?」とやや意外に感じたのだが、
登場人物の職業について「メリルリンチ」「ホンダプリモ販売店」
など実際の企業名を出したり、
「偶然の旅人」で主人公の車について詳細に説明したり、
スターバックス、GAP、ボディショップなど
具体的な店名を表記したショッピングモールを
重要なドラマの舞台に設定しつつ生活感を一切感じさせないところ、
登場人物の短くはない半生や日常生活を
簡潔な、乾いた印象の文章で描写するスタイルがそう思わせたように思う。

とはいえ、淡々とした文章の向こうにじわじわと沁みるような
奥深さが感じられるところが片岡義男との決定的な違い。

唯一、どうしても腑に落ちない箇所があった。
「どこであれそれが見つかりそうな場所で」の中に
どういう意味なのか、何を言いたいのかまったく理解できない、
わたしにとっては唐突で不可解な一行があって気になる。

'06 2 ★★★★★
[PR]

by Gloria-x | 2006-02-03 16:40 | ブックレビュー