思いわずらうことなく愉しく生きよ/ 江國香織

裕福で自由な空気の家庭でのびのび育った三姉妹の
普通なようで普通じゃない生き方と日常。

夫から暴力を受けている長女麻子の日常と心情描写が
緊張感を持続させながらストーリーを引っ張っていく。
暴力行為そのものより、無言の威圧で妻の行動を規制し、
友人や家族とも疎遠になるように仕向ける夫と、
麻子がそれを自分の意志だと思い込んでいくプロセスが怖い。

わたしもDV被害者の知人から何度か生々しい告白を聞いたことがある。

夫が帰宅した足音を聞いただけで恐怖で胸が苦しくなる、
殴られない日が続くと「今度はいつ殴られるのか」と逆に不安で怖くなる、
殴られるのは辛いが「これでまたしばらくは優しくしてくれる」とほっとする、
人間の顔っておもしろいほど変形することがわかった、etc・・・

麻子の心情描写を読んで彼女たちが語った数々の話を思い出した。

わたしは常々「もし拷問されそうになったら
される前に即行でペラペラ口を割る」と断言しているし、
もし男に殴られるようなことがあれば最初の一発でサヨナラだ。

熱帯に住む人が凍死の心配などできないように、
通り魔などは別として「親密な相手である男性に殴られる」なんてことが
自分の身に起こるとは想像もできない。

だから、たとえいろんな事情はあるにせよ
DV被害者である妻が夫と縁を切らない心境が理解できない。
また、被害女性はなぜか夫の前につきあった男にも
殴られていたりするのも不思議。
彼女たちの中に「男は女を殴るもの」という認識があり、
それが男の暴力を誘発するのだろうか?

身近に被害者がいたからか、DV問題について関心が高くなったが
その病的な夫婦関係と両者の心情は未知の世界だし、
永遠に無縁でいたい。

'06 1 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2006-01-21 14:01 | ブックレビュー