先達の御意見/酒井順子 文藝春秋

'04年の大ベストセラーで流行語にもなった「負け犬の遠吠え」。
本書は「負け犬」をテーマにした著者と阿川佐和子、内田春菊、
小倉千加子、鹿島茂、上坂冬子、瀬戸内寂聴、田辺聖子、
林真理子、坂東眞砂子、香山リカ各氏との対談集。

「負け犬・勝ち犬」という言葉が誤読され、
経済格差による「勝ち組・負け組」という意味で一人歩きしている。

久本雅美、鈴木杏樹主演のドラマ化作品でも
いわゆる「勝ち犬」は揃ってリッチなマダム。
夫は会社経営者やエリートサラリーマンで、
妻は子供のお受験などに情熱を注ぎながらも暇をもてあまして
自分の存在意義を見失って悩む専業主婦。
一方「負け犬」はトレンディドラマに出てくるような
おしゃれなマンションに住む高給取りのキャリアウーマンと
両極端にパターン化された描き方だった。

子供を保育所に預けてパートで家計を助ける糟糠の主婦や、
昼からパチンコやカラオケに行き、子供抱きながら煙草吸うヤンママも
酒井の定義によれば「勝ち犬」のはずだが、
そういう主婦は絶対に「勝ち犬」とは言われない。
同様に「負け犬」の現状もあんなにかっこよくないはずだ。

内田春菊は「ファザーファッカー」しか読んだことがないけど、
自分とはあまりにかけ離れすぎて正直苦手なタイプ。
暴力男やヒモ男と結婚、離婚を繰り返し、
5回中絶した後4人子供を産み、最終的に6人は産む予定で
子供をボンボン産み続けることについて女性の体を炊飯器にたとえて
「せっかくついてる機能を使わないのはもったいない」と語る。
想像を絶するたくましさというか強靭さには畏怖すら覚えてしまう。

林真理子は有名になってからも長い間、
いわゆる「負け犬」代表みたいな存在だったのに、
結婚、出産で一転して「勝ち犬」になったひと。
酒井はそのあたりにも触れながら「わたしも結婚したいんですけどねぇ・・・」
と言うが、彼女と林真理子の決定的な違いは
コンプレックスとハングリー精神の有無だろう。

酒井が生まれつき当然のように享受していたライフスタイルは林にとっては夢の世界。
東京のそこそこいいお家に生まれ育ち、
私立の中高一貫女子校時代から合コンするなど都会の遊びを満喫。
高校時代からコラムニストとして活躍していながら
いい会社に就職してOL生活も経験とまったく挫折なしの人生。
田舎から上京後、様々なコンプレックスや挫折を克服していった林とは
どちらがいい悪いではなく、欲しい物を掴む握力が違うと思う。

他の対談相手も一流どころばかりなのでさすがに読みごたえがあった。
瀬戸内、田辺、坂東との対談で何度も話題になる「源氏物語」も読んでみたくなった。

'05 11 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2005-11-13 10:18 | ブックレビュー