長崎乱楽坂/吉田修一 新潮社

大家族に出入りする刺青の若い衆、
毎晩繰り広げられる酒宴。
暴力と性の気配が濃厚な一族の繁栄から衰退までを
その家で育った少年の視点から描いた長編。

こんな鉄火な血筋ではまったくないが、
子供の頃、毎夏休みを過ごした親戚の家を思い出した。
大叔父が家長で、その息子や娘たちが若い頃は
親戚や近所の誰彼がしょっちゅう出入りしてにぎやかな家だった。
その家で、わたしは小さな子供としてみんなに可愛がられ、
あらゆる責任から免除されて甘やかされる気楽な身分。
自分の家とは大違いで、
その家にいる間は心の底からのびのびくつろげた。

今、その家には年老いた大叔母が一人で暮らしている。
「家」も人間の一生と同じような歳月を辿るものだと
いうことにしみじみと思い至る。
都会生まれのわたしには田舎というものがないが、
あの家での思い出が郷愁と呼ばれる感情だろう。
この作品はその感情を喚起させてくれた。

'05 9 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2005-10-07 12:05 | ブックレビュー