桃/姫野カオルコ 角川書店

直木賞候補になった「ツ、イ、ラ、ク」と対になった中編集。
人口約4~5万人、住民全員が親戚というほど小さくもない、
世界中どこにでもありそうな小さな田舎町のゴシップ。
ひとつの出来事が6人の人物の視点から描写されているため、
同じ事件、同じ登場人物のことを語っているのにその印象は大きく異なる。
また、6編すべてが違う文体で書かれているのもこの著者ならでは。

~男子がまだ字もろくに読めないころから、女子は、某姫がその美貌で
経済力のある王子を射止める絵本を見聞きし、
男子が怪獣カードを集めているころには、女子は、美貌はなくとも
「ドジ」をキュートに演出する術で長身痩躯の男を射止める漫画を読み、
男子が廊下でプロレスごっこをしているころになれば、
女子はもう生理があるのだから、こうしたことについてのキャリアが
男子とは比較にならない。年季がちがう。~


~母は忘れていたのだろう。(中略)あるていど以上の数の人間が
ある場所に集まったとき、そこに集まった人間は、
身につけたなんらかの空気によって、単位となる群れが形成されるという感触を。~


'05 8 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2005-08-16 21:28 | ブックレビュー