紙の月 /角田光代

ひしひしと身に迫り、身につまされる怖い話。
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裕福な家庭に育ち、結婚後も経済的に恵まれた生活を送っていた主婦が
パートで銀行に勤め、優秀な成績を認められて契約社員に。
ある日、営業帰りに立ち寄ったデパートで買物する際、
顧客から預かった金に手をつけてしまう。
それを境に彼女の中でバランスが崩れ、金銭感覚が麻痺。
やがて約1億円を横領するまでになる。
事件発覚前に海外に逃亡した彼女は果たして逃げ切れるのか?

ああ~またしても読みごたえ満点!
ページをめくる手が止まらない反面、
読み終わるのが惜しい&引き込まれすぎてクラクラし
セーブしながら読むという矛盾のスパイラルに・・・

ストーリーは主人公の梅澤梨花、彼女の元同窓生、元恋人、
それぞれの視点で交互に進行する。
そして、各人がなんらかの形でお金の問題を抱えている。

主人公・梨花が夫との会話で抱く
言葉にはできないもやもやした違和感や
横領を始めてから抱く、不思議な多幸感や万能感。
そのあたりの心理描写がものすごく緻密でリアル!

「浮世の悩みの9割はお金で解決できる」
「この世でいちばん怖いのは貧乏」
とわたしは常々思っている。
「お金がすべてじゃない」とキレイ事を言えるのは
お金の苦労をしたことがない人だ。

こういう考えを持つわたしには、
ほんとリアルというか身につまされっぱなしの怖い話でした(-_-;

G・W、横領したお金で若い恋人と
高級ホテルのスイートルームに連泊し、
ルームサービスで食事やシャンパンを頼む。
高級店で買物三昧し、ハイヤーでホテルに帰る。
当然、出会う人誰もが親切で気持ちよく接してくれる。
ストレス皆無の天国のような世界だ。
梨花は資産家の顧客たちの顔を思い浮かべ、
金持ちが一様におっとりとしていることに納得する。

その一方、連休中の平日はホテルから銀行に出勤。
満員の通勤電車、人を押しのけ突き飛ばして歩き、
ガツガツと卑しい表情の人々の群れ。
それこそ梨花が本来いるべき現実社会なのだが
一度天国を味わった彼女には我慢できない。
疲れ果ててホテルへ帰ってきた梨花は
「こここそ本来のわたしの居場所だ」と心からホッとする。

スケールの差こそあれ、
この感覚はわたしにも馴染み深いものである。

梨花の元同級生で、バツイチ編集者の買物感覚も
共感する部分が多々あり恐ろしくなった。
一方、元恋人の妻は共感度ゼロで不可解な存在。

読む人のバックグラウンドや金銭感覚によって
感情移入のポイントや度合いも様々なのだろうけど
現代日本に生きているなら、
仙人みたいに浮世離れした人でないかぎり
かなり共感するのではないだろうか。


'12 4 ★★★★★
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by Gloria-x | 2012-04-09 23:26 | ブックレビュー