曽根崎心中 / 角田光代

江戸時代の女性心理をリアルな現代感覚で表現!


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18世紀初頭、大阪の曽根崎で実際に起きた心中事件をもとに
近松門左衛門が書いた人形浄瑠璃を、角田光代が現代語の小説に翻案。
大阪内本町の醤油屋・平野屋の手代・徳兵衛と
堂島新地天満屋の遊女・お初の悲恋の物語。

時代小説は苦手だけど、さすが角田光代!
江戸時代の遊女の心理をここまでリアルに共感度高く表現するとは。

徳兵衛が友人に騙された顛末を話すのを
最初はハラハラしながら聞いていたお初。
話が長いわりに肝心なことを言わない徳兵衛に
「何をのうのうと話してるのか、この男は」と
心の中でイライラを募らせたり、
がくりと背を丸め、うなだれて泣く徳兵衛を見て
「わたしが守ってやらないと」と思ったり、

手に手を取って逃げた最後の最後にきて
実は徳兵衛は「騙された」と嘘をついているのでは?
狂おしいほど好きな男だけど
実は自分は彼のことを何ひとつ知らないのでは?
とチラッと思ったり。

惚れた男の、弱いところも情けないところも
全部ひっくるめて、それでもどうしようもなく好きという女心が絶妙。
ラストに向かってたたみかけるような心理描写は圧巻だ。

おかみがお初に言う。
「恋なんかするもんやない」

金も甲斐性もない若造との恋などという
つまらないものでで自らの値打ちを下げるな、と。

「つまらんもんやろうか」と問うお初に
「つまらんもんや」とおかみは即答する。
「一年たったら、笑い話。十年たったら、覚えてないわ」

言えてる!!!
渦中にいるときにはわからないんだけどね。

「運命の人はいるよ」と自信たっぷりに言う姐さん。
運命の人は前世でも縁のあった人だから
何度生まれ変わっても、一目見ればすぐわかるという。

運命の人をまちがえることもあるのか
まちがえたらどうなるのか、と聞く後輩たちに姐さんは

「心配おまへん。まちごうたときはすぐにわかる。
その恋がうまくいかなんだら、すぐわかるんや。
あてらが不安になる恋、苛々する恋、
信じられへん恋、会えん恋、すれちがう恋、
ぜえんぶまちがいなんや。
運命の人やったら何ごともすんなりいくもんやで」


これも言えてるー!!!
経験者なら全員共感するはず。

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徳兵衛が騙し取られたという「二貫」を
「現在の金銭感覚ではおよそ三百万円」と
巻末の用語手引で解説してくれているのが◎

時代モノの映画を観ていつも隔靴掻痒なのは
劇中にセリフで出てくる貨幣価値が
いったい今の感覚でいくらなのかわからないこと。
飲み食いの値段くらいなら推測できるけど
侍の給料、刺客の報酬、遊女の身請代、賄賂etc・・・
現在の価値で〇十万円位、〇百万くらいとわかったほうが
感情移入度もアップすると思うんだけどなー。


'12 3 ★★★★☆
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by Gloria-x | 2012-03-08 10:27 | ブックレビュー