八日目の蝉 '11(日本)

劇場鑑賞の時は泣かないわたしを泣かせるなんて、すごい!

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角田光代の原作は衝撃的だった。
この人の小説は初期からほとんど読んでいるが
「直木賞を獲ってから作家として格段にグレードアップしたなぁ」と
つくづく感心したのが「八日目の蝉」だった。
で、自分のレビューを読み直そうと思ったら、書いてない!なんで?
(吉田修一「悪人」もそうだったけど、小説の力に圧倒されすぎて書けなかったのか?)

不倫相手の子供を誘拐した女と
誘拐犯を実母と信じて4歳まで共に一緒に暮らした娘。
2人の刹那的な逃亡生活と
実の両親のもとに戻ったものの
崩壊した家庭で両親にわだかまりを抱いたまま成長した娘の
現在を交差させて描くヒューマンサスペンス。


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永作博美、驚異的に若い!可愛い!うまい!
妻子ある男と不倫して子供を中絶、男の実子を誘拐して
自分が生んだ子供のように愛情を注いで育てる・・・
女の業の塊みたいに恐ろしいキャラクターなのに
永作が演じると「生臭さ」「ドロドロ感」をまったく感じさせず
どこまでもひたむきで透明なので、思わず感情移入してしまう。
(実際には1ミリも共感する部分などない女なのに)

最近、アメリカでよく似た事件があった。
誘拐犯の女に育てられて成人後、自力で実の両親を探し出したという女性。
アメリカの女性はけっこう虐待されていたらしいが
「八日目の蝉」の女は誘拐した子供をほんとうに慈しんで大事に育てる。

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特に小豆島でのつかのまの幸せな日々は夢のように美しく悲しい。
(ちょっと「砂の器」を思い出した)

しかし、あのまま逃げ続けられたとして
永遠に愛情を注ぎ続けられるだろうか?わたしは「否」だと思う。
子供は成長するし、一個の人格がある。
育てる側の思い描く理想通りの子にはならないのだ。
ただ可愛いだけのペット的な存在ではなくなった時に
二人の蜜月は必ず終焉を迎えていたに違いない。
そう考えれば、娘が4歳の時点で引き離されたことは
お互いにとって幸いだったのではないだろうか。

「娘が誘拐されてからずっと気が狂いそうだった」という実母役に森口瑶子。
彼女は自分の頭の中で作り上げた理想の娘を愛し、
狂おしいほど求めていたのだろう。
だから、思い描いた子供とは違う娘が戻ってきた時、
ありのままを受け入れて愛することができない。
この母娘は誘拐事件が起きなくても相性悪かったのではないだろうか?
(わたしが母娘関係に懐疑的すぎるからそう思うのか?)
子役も井上真央も、永作博美とのほうが実の親子のように似ているのも皮肉だ。

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最近の日本映画やドラマをほとんど観ないので
井上真央の演技を初めて観たが、予想以上の演技力と存在感だった。

素材はいいのに美容や服装に全然かまってなくて
他人と関わらず、開き直ったように無表情。
衣食住すべてにおいて「楽しみ」皆無なライフスタイル。
そのくせ、やることはやってる(異性関係)。
現実にもたまにこういう女性がいるけど、その感じがよく出ていた。

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驚いたのが小池栄子。
本人のイメージと真逆のキャラクターだが
上手く役作りして違和感がなかった。

余貴美子と田中泯、画面に登場しただけで
「只者じゃないオーラ」全開!

'11 5 1 劇場 ★★★★★
監督:成島出
出演:永作博美、井上真央、小池栄子、森口瑶子、劇団ひとり
    余貴美子、風吹ジュン
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by gloria-x | 2011-05-02 19:05 | 映画レビュー