ぼんち/山崎豊子

船場ぼんぼんの女道楽、スケールのデカさに驚くやら感心するやら

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子供の頃、津川雅彦主演でドラマ化されていたのをうっすら憶えている。
映画版は市川雷蔵だったそうで、昔の役者すぎてピンとこないけど
津川雅彦はこの役にぴったりだったのじゃなかろうか。
わたし的には中村勘三郎(元・勘九郎)の若い頃をキャスティング。

船場界隈はわたしも昔から馴染みが深く愛着のある大好きな街。
鰻谷、長堀橋、心斎橋、新町、上本町、下寺町などなど
今も生活圏の地名が次々出てきてルートマップも目に浮かび楽しめた。

~大阪では良家の坊ちゃんのことを、ぼんぼんと言うが
 根性がすわり地に足がついたスケールの大きなぼんぼんを
 ”ぼんち”という敬愛をこめた呼び方をする~


船場で四代続いた足袋問屋「河内屋」
五代目の喜久治に父親は死に際こう言い残す。
「ぼんぼんになったらあかん、ぼんちになりや。男に騙されても、女に騙されたらあかん」
丁稚あがりの婿養子旦那として辛酸をなめてきた含蓄のある言葉だった。

暖簾と財力が一切を支配する船場。
三代も母系を重ねた河内屋に君臨するのは喜久治の祖母・きのと、母・勢以。
きのの女帝ぶりがすごい!まるで「西太后」!

歳を重ねてもなまめかしく艶のある白肌を保つ美人で、恐ろしいほど権高で驕慢。
そして勢以はきのに甘やかし放題に育てられたお嬢で
実母の袖の陰からしたいこと言いたいこと三昧。
ああ、生まれ変わったらこんな身分になりたいもんです。

この女2人が常にぴったり寄り添って贅沢三昧したり、
小意地の悪い表情を浮かべて、喜久治やその妻、妾たちに
無理な横車を通したり残酷な仕打ちをするのだが
その描写が読みごたえ満点!
こういう密着母娘って現実にもたまにいるけど、
わたしには理解しがたい不思議な存在だ。

大事な暖簾を継ぐ直系の男子が生まれたら溺愛すると思いきや
父親が丁稚あがりで「種馬」扱いだったからか2人揃って喜久治には冷淡。


祖母と母の支配、船場のしきたりという重い枷をかいくぐり
喜久治は次々に女に手を出し、妾にしていく。
売れっ子芸者のぽん太、お茶屋の養女・幾子、
名仲居のお福、カフェのホステス・比沙子、舞妓の小りん
女たちのキャラクターが容姿も性格もバラエティに富んでいる。
わたしは陽気で抜け目ないけど裏表のないぽん太が好み。
地味で控え目だけどしぶとそうな幾子は辛気臭くってイヤだわー。

手を出したからには家を一軒買い与え、月々のお手当もたっぷり
着物や宝石はもちろん、女によっては馬主にしてやるなどすごい甲斐性!

とにかく喜久治の金遣いの豪快さ、きのと勢以の浪費っぷりに驚きっぱなし!
一回のお茶屋遊びや芝居見物に、今の感覚で数百万使うし
1000円あれば家一軒買えるという時代に
妾が男の子を産んだら5万円、女の子なら1万円ポンと与えるんですよ!
(ところで、こういう昔の小説を読むと貨幣価値がはっきり分からなくて困る。
再版した時に巻末にでもガイドをつけてほしい)

ラスト、妾たち4人が昼間からいっしょに風呂に入り、
お互いに体を流し合ったり、湯をかけてふざけあいながら
サバサバと自分の将来設計を語るシーンはイタリア映画のような趣を感じた。

'10 10 ★★★★★
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by gloria-x | 2010-10-15 23:01 | ブックレビュー