悪人 '10(日本)

原作のやるせなさ、閉塞感、メッセージがきちんと映像化されていてひと安心

c0008209_20195683.jpg

吉田修一の(現時点での)最高傑作だと思っている「悪人」の映画化。
原作はもう3回くらい読んでいて、その度に打ちのめされるというか、
作品世界に深く入り込みすぎて読後しばらくぐったりするほど。
それなのに、なぜかレビュー書いてないのです!自分でも不思議・・・
未読の方はぜひ読んでほしい一冊です!
c0008209_20204995.jpg

さて映画のほうは
原作ファンとしてはダイジェストというか凝縮感は否めないものの
独特の空気やメッセージはきちんと映像化されていた。
クレジットを見ると脚本は監督と吉田氏の連名だったので納得。
登場人物の住まいのリアリティも◎
特に樹木希林が立ち働く古い台所のゴチャゴチャ感!
セットとは思えない!美術さんすごい!
c0008209_2045234.jpg
深津絵里、モントリオール世界映画祭で最優秀女優賞を受賞!
ほぼスッピンで地味~な田舎の女性を演じても自然。
美人女優なのにまったく嫌味やクサ味がないところがすごいわ。

c0008209_2143529.jpg
妻夫木聡は特に好きじゃないけど毎度「うまいなぁ~」と感心させられる。
原作ではこの役に大好きなTOKIO長瀬クンを想定して読んでいたので
やや物足りなかったけど、今回もやっぱりうまかった!

c0008209_211064.jpg
日本の映画界にこの人がいなくなったらどうなるだろうとまで思わせる樹木希林。
演技とか役作りなんてレベルじゃない、もう憑依してる感じ・・・
原作でも祖母のパートはかなり読みごたえがあるのだが
カメラの前に立っただけでこの役の背景の厚みを体現してるのがすごい!

岡田将生と満島ひかりもよかった。
満島ひかりはクヒオ大佐で初めて観た。
生理的にすごくNGなタイプなのだが、その感じも含めてこの役にぴったりだった。
c0008209_21213787.jpg


わたしは生まれも育ちも現在も大阪市内。
ずっと都会の生活しか知らないので
地方に生まれ育ち、そこに住み続ける人の感覚は想像の域を出ない。

今まで、仕事で地方都市に行った時など
「もしここに生まれていたら・・・」と漠然と想像したことも。
「のんびりして平和でいいかもなぁ」と思う土地もあれば否もある。

「絶対ムリ!」と身震いしたのが出張で行った某県だった。
その県の方には失礼だけど、
その時に想像した無間地獄に堕ちていくような恐怖感が
「悪人」を読んだり観たりしていると再現される。

そりゃ、こんな事件が起こっても不思議はないかもなぁ・・・というか
物理的、精神的にいろいろ不自由なことが多そうなのに
インターネットや携帯などの進化によって
都会と変わらない情報を得られることが
若者世代にはかえって酷だったりするのだろうか?

この作品に描かれているような地方の閉塞的な世界で
「誰とも出会えないかもしれない」という不安を抱きながら
日々を送っている妙齢の男女には
いろんな面で身につまされすぎる作品かもしれない。
それもまた想像でしかないのだけれど・・・



'10 9 15 劇場 ★★★★★
監督:李相日
出演:妻夫木聡、深津絵里、樹木希林、柄本明、岡田将生、満島ひかり
[PR]

by gloria-x | 2010-09-16 00:15 | 映画レビュー