死の記憶 Mortal Memory/トマス・H・クック

ミステリーの域を超えたといってもいい、濃密で強烈な「家族の悲劇」
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図書館に予約した本がまだ届かず、いよいよ読む本がなくなってBook offで入手。

冷たい雨の降る午後、9歳のスティーヴは家族を失った。
彼がともだちの家で遊んでいる間に
父が母と兄姉をショットガンで射殺し、そのまま失踪したのだ。
事件から35年、父はついに逮捕されず、
スティーヴは建築士となり、結婚して息子をもうけた。
ある日、彼の前にレベッカという作家が現れる。
彼女は家族を皆殺しにした男たちについての本を書いていると話し、
唯一の生存者であるスティーヴに取材を申込む。
当時のことを少しずつ思い出していくスティーヴ
そして、幸せな家族が突然崩壊した真相とは・・・・


事件の日まで絵に描いたように「良き夫、良き父」だった男、
家庭人としてだけでなく、職場や近所で彼を知る誰もが
「絶対にそんなことをする人とは思えない」と驚愕する・・・
突然彼をそうさせたのはどんな衝動だったのか?
彼は日々何を望み、何を我慢して暮らしていたのか?

「家庭内殺人、その秘密と真相」と聞いて想像する
ありがちで安っぽい設定ではなく、しかも説得力がある!
「心臓を貫かれて」(こちらは実話だが)にも匹敵する強烈なひきこまれ感。


じわじわと少しずつ核心に近づいていく描写が
あまりにも小出しで思わせぶりなので、途中でややもどかしくなるが
緻密な構成と描写力、抑制のきいたトーンの中を
主人公と共に暗く深い過去を探索する感覚は強烈だ。
とにかく真相を知ってすっきりしたさに一気に読破。
また、家族とは、人生とは、運命とは、などについても考えさせられる
重厚かつ深遠な読後感である。

'10 8 ★★★★☆
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by gloria-x | 2010-08-12 17:24 | ブックレビュー