人形を捨てる / 藤堂志津子 新潮社

私小説とエッセイの中間のような短編集。
凄絶と言っても過言ではない家族と生い立ち、波乱万丈な人生に圧倒された。
幼少時から現在まで、その時々の自分の心中を冷徹に分析して
実の両親をあるときはばっさり斬り捨て、
あるときは淡々と突き放した視線で語る。
著者の強靭な精神力と筆力は見事というしかない。

生涯を通じて見苦しいほど女癖が悪く、
70歳を過ぎて他の女といっしょになるために離婚した父親のことを
著者ははっきり「大きらいだし、憎んでもいる」と書ききっている。
また、倒れて半身不随になり「恥ずかしい」と外出したがらない母親に対して
「私は冷たい性格なので(中略)ほとんど同情しない」と突き放している。
これだけを読むと冷酷非情な人物のようだが、全編通して読むと
幼い頃からの親との確執、著者曰く「家族というものの病理」というものに
長年がんじがらめにされて苦しんできた著者に心底共感し、
この冷淡さをかえって潔く感じる。

親との関係や自分の過去にマイナスの感情を抱くことは
必ずしも人間として問題があるわけではないし、
そのことで罪悪感を覚える必要はないと思うことができ、
ある意味わたしを解放してくれた作品だ。

'05 1 ★★★★★
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by Gloria-x | 2005-04-14 23:41 | ブックレビュー