嘘、そして沈黙 LIE TO ME/デイヴィッド・マーティン

魅力的な本は何度読み返しても引き込まれる。原題も邦題もいい!

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手元の本を読みつくしてしまい、禁断症状を抑えるため本棚を漁って
以前読んだ本の中からピックアップ。
これは海外ミステリーの中でも出色の作品です。

ワシントン郊外の邸宅で実業家ジョナサン・ガエイタンが血まみれの死体で発見される。
彼はバスタブの中で自身を切り刻んで自殺したと断定されたが、
「人間嘘発見器」の異名を持つキャメル刑事は
ジョナサンの美しい妻・メアリーの供述の嘘を見抜き、秘密の匂いをかぎとる。
彼女は前夜、邸宅に侵入したフィリップという男の存在を隠していたのだ。

このあらすじだけでは平凡なミステリーみたいだけど
7月の暑い日、殺人鬼フィリップが「少女の手を握ったまま」
茂みに潜んで邸宅を見張る冒頭のシーンから
まるで映画を観ているように頭の中に映像が浮かび、
そのまま一気に物語世界に引き込まれてしまう。

「羊たちの沈黙」の伝統を受け継ぐと称されるサイコ・スリラーなので
殺人描写などはけっこうグロテスクだが
作品全体のトーンは静謐で大人っぽい。

人物造形も緻密で、各キャラクターの背格好から顔の造作、
着ている服、汗や体臭までリアルに感じられる描写もすごい。
ジョナサンを死に至らしめた想像を絶する秘密や
キャメル刑事が離婚した富裕層出身の元妻に抱き続けるコンプレックス
フィリップがモーテルで覗き見する幸福な一家など
人間ドラマも読み応えがある。


わたしの勧めでダーリンも読んでハマッたのだが
お互い「殺人鬼フィリップ」にある実在の男性をイメージしていて
それが偶然同じ人物だったことが判明!
駅でたまに見かける見ず知らずの人なのだが
2人で出かけた時にたまたま遭遇し
ダーリンが「あ、フィリップ」とつぶやいた時は鳥肌が立った!
こういうのも読書の醍醐味ですねー


とにかくバツグンにイメージ喚起力の強い描写に導かれ
映画を一本観終わった感覚で読了。
特に爽やかな読後感をもたらすエピローグが秀逸!
映画化されなかったのが不思議なくらいだ。

初版が1992年だからか、今回再読して
キャメル刑事の一連の行動や言葉使いに
モタつきと時代遅れ感を抱いたのが残念。


'10 8 再読★★★★★
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by gloria-x | 2010-08-05 14:02 | ブックレビュー