重力ピエロ '09(日本)
予想外によかった!根本的な部分に納得いかないけど、それを言っちゃおしまいなので・・・
わたしはたまたま読んだ一冊が合わなくて、以来手を出してないけど・・・
これも原作は未読だが、この話は映画で観たからよかったのだと思う。
とにかくキャスティングの勝利という感じだ。(ネタバレあり)
大学院で遺伝子研究をする兄・泉水と、
グラフィティアート(落書き)消しの仕事をする弟・春。
2人は、仙台の街で起こる連続放火事件現場と
グラフィティアートの関連性に気付き、事件の謎解きに乗り出す。
しかし、それが17年前に家族に起きた悲劇につながっていく。
兄弟の母は17年前に連続レイプ犯に襲われ、春を妊娠したのだ。
ただのキレイな顔したイマドキのコじゃなかったのね。
兄・泉水役の加瀬亮も華のある岡田を単に引き立てるだけじゃなく、
バランスの妙というか、地味に徹した存在感がすごい。
そしてこの映画、子役のキャスティングもきちんとしてるのだ。
洋画では珍しくないけど、成長後のルックスと違和感ない子役を配していて◎
春役の子役が可愛かった♪
思わずホロリとしたシーン
寝る前に二段ベッドの上下で遊んでいた兄弟
春が思い詰めた口調で「お兄ちゃん、レイプってなに?」と聞く。
どう答えれば弟を傷つけず、この場の空気を変えられるか悩んだ泉水が
苦し紛れに上の段からひょっこり顔を出し
「レープ、レープ、ファンタグレープ」と唱えて弟を笑わせる。
すると、弟も幼いながら兄の気遣いを察し
質問のことは忘れたフリで一緒に唱えるのである。
役者として「おっ!」と目を引かれたのは吉高由里子。
高校時代から春をストーカーしていた根暗なブスが
振り向いてもらうために全身整形したという役どころなのだが、
バーのカウンターから兄・泉水の不審な行動を目撃し、
思わず凝視する最初の登場シーンの表情で「おっ!」と思い、
自分が尾行されていると勘違いした泉水に問い詰められるシーンの
演技なのか何なのか戸惑うようなすごい存在感に「只者じゃないかも」と思った。
(大昔のキムタク主演ドラマ「ギフト」で初めて篠原涼子を見たときと同じ感覚)
幼い泉水をベビーバギーに乗せてお買い物し
オリジナルらしき野菜の歌を歌いながら、子供を機嫌よくさせつつ
帰宅するシーンなど自然でいい味出していたなぁと思う。
渡部篤郎もまさに適役!
この人、こういうキモい役柄で世に出てきて
一度好感度アップしたのに、一周回って原点に戻ったって感じ(笑)
納得いかないポイントその1
そこに文句つけちゃこの話自体が成り立たないんだけど、
レイプ犯の子供とわかっていて産むという決断はいかがなものか?
たまに実話でもこういう話を見聞きするけど
生命というものを間違った方向で過剰に神聖化しているような気がするのだが・・・
納得いかないポイントその2
春がレイプ犯の子供であることは狭い田舎ゆえ誰もが知っていて
子供達も他人の噂や中傷から聞かされて育っているという設定。
それはしかたないとしても、母親の事故死後、
わざわざ父親が「話しておくことがある」と二人の息子を呼んで
あらためてそのことを告げるのはいかがなものか?
ここは嘘でも「他人は憶測でいろんなことを言うが、春はまちがいなく俺の息子だ」
と言うべきではないだろうか?春はまだ高校生だし・・・
そのへん、ドラマティックな効果を計算したフィクション臭を感じるものの
全体的には予想外の佳作だった。
'10 7 WOWOW ★★★★☆
監督:森淳一
出演:加瀬亮、岡田将生、小日向文世、
鈴木京香、吉高由里子、渡部篤郎
by gloria-x | 2010-07-21 14:16 | 映画レビュー