日本語で読むということ/水村美苗

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わたしの人生で極めてインパクトの強い読書体験のひとつが
水村美苗の本格小説である。

今では何年かに一度再読する愛読書となった「本格小説」や、
日本初のバイリンガル横書き小説私小説 from left to right
書かれることになった経緯や、
著者自身の読書体験や愛読書についてのエッセイ集。

父親の仕事の都合で13歳でアメリカに渡った著者にとって
日本語で書かれた日本の文学を読むことは
それなしでは生きてゆけないほど、
パンを食べるよりももっと必要だったという。
そんな著者がパリに留学したとき、
お世話になったフランス人の家に違和感を覚える。
それは本が一冊もないことだった。

自分たちの豊かさを人に分け与える優しい家族だが、
本とは無縁の生活で、芝居も観に行かず、家で音楽も聴かない。
食卓の会話も抽象的なところはない。
豊かさは自然に本と結びつくと思っていた著者は
驚き、軽侮の念や失望を感じる。
しかし、後年、それは自分の無知だったのだと思い知る。


これはわたしにも多いに思い当たることだ。
本を読まない人には申し訳ないけれど、

物心ついた時から、呼吸するように本を読んでいて
酸素と同じくらい本が必要な活字中毒なので、
本を読まない人に対して、著者と同じような感情を抱きがちなのである。

本は読まない、映画や芝居も観ない、音楽も聴かない、となると
「この人、いったい何してるんだろ?」と心から不思議になる。
冷静に考えると、スポーツとかクラフト系とかゲームとか
人それぞれいろんな趣味があるのはわかるのだけど・・・

ジョン・トラボルタが実に稀有な俳優だと語る項がおもしろかった。

'10 5 ★★★★☆
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by gloria-x | 2010-05-04 22:32 | ブックレビュー