見知らぬ場所 Unaccustomed Earth/ジュンパ・ラヒリ

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好きな作家ベスト5に入るジュンパ・ラヒリ最新作。

前作その名にちなんではここ数年読んだ海外の長編小説の中では
大いに心を動かされ、読書の醍醐味を再確認した作品だ。
(カズオ・イシグロわたしを離さないでと互角)

映画化も原作の味わいを損なわず、なおかつ
ドラマ的にもビジュアル的にも見事な完成度だった。

第一部は5篇からなる短編。
第二部は3部連作「ヘーマとカウシク」。
どれも家族間の愛と確執、夫婦や恋人の間で生じる齟齬など
人種や世代を超えて誰もが思い当たる普遍的なテーマを
押し付けがましくなく、静かに心に沁みるタッチで書いている。


デビュー短編集停電の夜に以来、
インド系であることを強く出すことが個性であり魅力だったが、
本作はふと主人公がインド系であることを忘れ、
いい意味で、普通の(という表現も変だが)
海外小説を読んでいるような感覚になることが多々あった。

なんといっても「ヘーマとカウシク」がよかった。
両親がたまたまインドの同郷の出身ということで
アメリカ東部の町で家族ぐるみのつきあいが出来た2つの一家。
それぞれの家の娘ヘーマと、息子カウシクは
思春期から大人になるまでまったく接点がなく、
それぞれ別の仕事に就いて世界に飛び出し、意外な土地で再会する。
淡々とした静かな語り口のモノローグで
交互に綴る物語が想像もしない衝撃的な結末で幕を閉じる。


ラヒリの小説を読んでいると、インド系移民って
みんながみんな裕福で高学歴なのかと錯覚してしまう。

登場人物のほとんどがアメリカの名門大学や大学院を卒業して
博士号や修士号を取得、エリート職に就く人たちばかりだから。
わたしみたいな庶民のコから見ると
まぎれもない「特殊な世界の人々」なのだけれど、
著者自身がそんな家庭環境で育ち、自身もそんな世界に属する人なので、
特殊でもなんでもなく、どうやらただ自然に書きやすいだけのようだ。

'09 11 ★★★★★
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by gloria-x | 2009-11-18 19:11 | ブックレビュー