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東京島/桐野夏生

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あたしは必ず脱出してみせる。
32人が流れ着いた島に、女は清子ただ一人。
果たして彼女はいつか脱出できるのか。

46歳の清子が南洋の無人島に来て5年が経った。
清子と夫がクルーザーで漂着してから3ヶ月後、
今度は日本の若い男ばかり23人が台風で漂流し、島に流れ着く。
そして次にやってきたのは7人の中国人の男たち。
彼らは船で運ばれ、島に捨てられたのだ。


無人島でのサバイバル生活が既に5年!
衣食住に関する記述だけでもクラクラするほどヘビーなのに、
登場人物たちのキャラがこれまた強烈!

清子は唯一の女ということで男たちに追い回され、自ら求めに応じて
たがが外れたように若い男と次々ヤリまくるのだが、
一方で、特殊な環境化だからこそ自分が求められていることや、
41歳で島に流れ着いてから、年々自分の価値が下がっていることも
シビアに認識しているのがおもしろい。
そのトーンがシリアス路線ではなく、唖然とするほどしたたかで
どこまでもあつかましいのが救い。

女を美化するどころか、ここまで徹底的に露悪的に描くという点で
桐野夏生の右に出る者はいないのでは?


最初は生理的な不快感でしんどいが、
読み進むうちにユーモア小説的要素が強くなってきて、
呆れ、失笑しつつ一気に読了。
途中、村八分にされていたワタナベの大逆転ですっきり!
ラストの後味も悪くない。

清子役は「顔」の藤山直美しかいないだろう。



'09 8 ★★★☆☆

by gloria-x | 2009-09-04 23:38 | ブックレビュー