私小説 from left to right/水村美苗

c0008209_226521.jpg
水村美苗著本格小説
本好きならこれを読まなきゃ人生損してる、と言い切れる一冊。

'04年に拙レビューで
読後しばらくは余韻さめやらずクラクラしていたほど。
何年ぶりかに小説らしい小説を読んだな~という心地よい満足感。
超が10個くらいつくおすすめ!
と絶賛している。

最近また再読したが、やはり時間を忘れて一気読みし、
興奮さめやらず本書に手を伸ばした。

こちらは「本格小説」とはちょっと毛色が違う。
12歳の時に父親の仕事で渡米した著者・美苗と2歳上の姉・奈苗。
日本を離れて20年、イェール大で日本近代文学を専攻する美苗と、
N.Yで売れない彫刻家としてバイト暮らしをする奈苗。
日本には戻れず、アメリカ人にもなりきれず、
ふたつの国、ふたつの言語の間でさまよう姉妹の会話で綴る
日本発のバイリンガル横書き小説。

私小説と銘打っているが、姉の奈苗は実在するのだろうか?
一人称の単独視点では閉塞的で偏りすぎるところを
性格の違う2人の登場人物の意見として語らせることで、
小説的広がりを出したのではないかとふと感じたのだが・・・

著者の過ごした環境と身分が羨ましすぎ!
「二十代のほとんどを大学に行ったり、休学したり、転校したり、
ヨーロッパに留学したり(中略)学生のような学生でないような身分」

「四年で大学を出ることも、大学を出たとたんに就職することも
期待されていないアメリカでは、
いつまでも大学のまわりをうろついている人間がかなりの数でおり、
私も外から見ればそのうちの一人」


とはいえ、アメリカで東洋人として生きていくのはかなりハードらしく、
アメリカ人が悪気などなく自分たちを韓国人や中国人と同類と捉えたことに
カルチャーショックともいえる驚きを感じたり、
ヨーロッパ人はたとえ亡命でアメリカへ来ても、
すぐにアメリカに同化できるから羨ましいと感じたり、
洗練されたレストランなどでスタッフが白人ばかりの場合、
自分には彼らのサービスを受ける権利はないような引け目を感じたり、
バイリンガルで高い教育を受けている著者でさえ感じる
複雑な人種的劣等感が興味深い。

日本人の父親とアメリカ白人の母の間に生まれた
Wendyという女性のエピソードも印象的だった。
容姿的には白人に近いのに、父と死別して母親の故郷に帰ったWendyは
「有色人種」日本人の血が半分入っているからと
アメリカ南部で黒人大学に進学する。
そして、ごく自然に黒人男性にセックスアピールを感じるようになるが、
それが日系人としてアメリカに生まれ育った友人には理解しがたい、というもの。

著者はN.Yで成長し東部の大学に進学するのだが、
同じアメリカで暮らす東洋人でも、カリフォルニアなら
もっとアメリカに同化できたのではないか、
という見方もなるほどという感じ。

わたしの妹も20年近くアメリカに住んでいるが、
彼女がこれを読んだらどんな感想を抱くのだろう、とふと気になった。

'09 8 ★★★★★
[PR]

by gloria-x | 2009-08-28 22:08 | ブックレビュー