ニシノユキヒコの恋と冒険/川上弘美

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女に優しく、ルックスよし、セックスよし、
だけど最後には必ず女に去られてしまう。
ニシノユキヒコという男について、彼の人生に関わった
時代も年代も様々な十人の女が語る連作短編集。

ニシノユキヒコの容姿について具体的な描写はないのに、
わたしの大好きな「長身の色白優男」に違いないと思う。
大島弓子の漫画を思わせる一『パフェー』
次のような描写を読むだけで像が浮かぶのだ。

~ニシノさんは目を閉じ、横たわったままハミングをしている~
~わたしが呼びかけると、ニシノさんはむっくり起き上がり、えへへ、と笑った~
~ニシノさんの口調だ。少し甘えたような、独特の口調だ~
~「来て、夏美さん」犬のような目でわたしを見る~

十人の女の独白にハッとするような鋭い一節が散りばめられている。

~甘くみあわないで、どうやってひとは愛しあえるだろう。
 許しあって、ほんの少し見くだしあって、
 ひとは初めて愛しあえるんじゃないだろうか~
『おやすみ』

~たぶんその女の子は、「可愛い」渡世を長く渡ってきた
 ベテランの可愛い子なのだろう。可愛い自分に対してみじんもためらいがない~

~女の子どうしの、ひそやかな、けれど国家の外交にも似た、このような
 「精神的な力の均衡関係」を、男の子はいったいどう感じているのだろう、
 (中略)たぶんおおかたの男の子は、何も感じていないのだろう。
 それどころか、そんなものが存在することすら、想像もしていないことだろう~
『水銀体温計』


'09 6 ★★★★★
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by gloria-x | 2009-06-08 00:05 | ブックレビュー