楽園/宮部みゆき

c0008209_22194875.jpgc0008209_2220679.jpgいったん読み始めたら、内容の重さに圧倒されて小休止したくなった時と
睡魔に襲われて本を落としそうになった時以外ストップできず一気に読了。

「模倣犯」事件から9年、未だあの事件を引きずるライター・前畑滋子のもとに
萩谷敏子という中年女性が不思議な依頼を持ち込む。
それは、最近交通事故で死んだ敏子の12歳の息子が描いていた絵のことだった。
16年前に両親に殺され、自宅の床下に埋められた少女の絵。
火事をきっかけに両親が自首した時には殺人の時効は成立、
両親が罪に問われなかったことで世間を騒がせた事件の絵である。
しかし、その事件が発覚したときには少年は既にこの世を去っていた・・・。

ミステリー作家の中には、
ストーリーテリングやアイデアは確かなのに、
人物の描き方が浅いというか、ステレオタイプなために
イマイチ物語に入り込めない人がけっこういる。
その点、宮部みゆきはパーフェクトだと思う。
ミステリー的要素はもちろん、時代を作品に反映する感性、
そして何よりも登場人物の完成度が高い!
まるで実在しているかのような存在感とリアリティがある。
(名前のセンスだけはちょっと?だけど・・・)

両親に殺され、16年間自宅の床下に埋められていた少女・茜は
誰もが認める美少女で、札付きの不良少女だった。
茜が心に抱えていた不満、孤独、葛藤と、
サブストーリーで登場する小学生の少女のキャラクターが重なる。
素直な妹と比べられ、親からは事あるごとに叱られ、
「可愛いげがない」「あんたはどうしていつもふて腐れてるの」と
言われ続けて傷つき、怒り、どんどんひねくれていく悪循環。

この2人はまるで子供時代のわたしだ。
たとえ子供を愛していても、親が子供の心をねじ曲げ壊してしまうことがある。
もしかしたらわたしも茜になっていたかもしれない・・・
でも、不良少女になるのは意外と勇気がいるのである。
美少女でもなく勇気もなかったわたしは茜にはならずにすんだが、
小学生・佐藤昌子の独白に強烈なシンパシーを感じた。

また、フリーライターという職業の描き方にもリアリティがあった。
「取材」という名目があれば、たいていの場所には
あっけないほど簡単に入ることができ、いろんな話が聞けること、
「仕事柄、赤の他人と話すことに慣れていて、
そこからの感触で人を見ることもそれなりにできるつもり」に共感。


'09 5 ★★★★★
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by gloria-x | 2009-05-30 22:23 | ブックレビュー