昔の恋人/藤堂志津子 集英社

昔の恋人と予期せぬ再会をした女性を描いた4つの短編集。

「昔の恋人」
編集者の織美の職場に突然かかってきた電話。
それは若い頃の飲み仲間で十数年も音信不通の城田からだった。

織美と城田みたいな程度の関係で、突然こんな風に連絡があって
「急だけど今から30分でもいいから会えないか」なんて言われたら、
現実的なわたしは借金の申し込みかと思って警戒するだろう。
多少なりとも色っぽい再会を望む相手ならこんな形で連絡してこないはずだから。

「浮き世」
美人で次から次へと男ができる35歳の宇多子は「私はツイているんだ」
と言霊を呼び込むように周囲に言いふらし、自分にも暗示をかけている。
しかし、堅実な暮らしを営む兄だけは彼女自身が目をそむけている
現実を容赦なくつきつけようとする。

こういう女性って実際にいるいる!
一見、モテてるみたいだけど実はきちんとした恋愛が長続きせず、
本心は結婚したいのにできない・・・
ポジティブシンキングはいいことだけど、勘違いは哀しい。

「魔法」
高校時代から憧れの存在で卒業後4年間つきあった府崎と
17年ぶりにばったり再会した睦葉。
女好きで遊び人の府崎にとって自分が都合のいい女だということを
わかっていながら、当時の睦葉は府崎となかなか別れることができなかった。
今は平凡で幸福な人妻になった睦葉に対して府崎は当然のように
「これからもたまに会おうよ」と言う。

恋愛の力関係は明白だ。絶対により多く惚れているほうが弱い。
相手がロクでもない男だということをわかっていて、
そのロクでもない部分をはっきり指摘して別れたいのに、
惚れた弱みでズルズル別れられない。
しかし、そういう恋はいったん魔法が解けてしまうと醒め方も激しい。
再会後の睦葉の行動はある種の「仕返し」で爽快だ。
でも、女がこんなことをする気になるだけ府崎はまだ魅力的な男ということだろう。

'04 12 10 5段階評価★★★★
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by Gloria-x | 2004-12-21 00:07 | ブックレビュー