古道具 中野商店/川上弘美

c0008209_12365596.jpg
久々にキャスティング意欲をそそられた小説。
キャラクター造形が緻密で奥深いので、読み進むうちに
登場人物が勝手に動き出して自然と映像が目に浮かぶ。

派手な事件もドラマもないのに、人物の魅力で引き込んで読ませる。
しかも、力技で引き寄せるのではなく、淡々と流れるように。
こういう小説が書ける人はほんとにすごい才能だなぁと思う。

古道具屋中野商店の店主ハルオは
女癖が悪い中年ダメ男なのに、どこか飄々として憎めない人物。
この役は小林薫ですな。
いや、それだと色気がありすぎるので古田新がいいかも。

ハルオの姉で自称芸術家、50代独身のマサヨは大竹しのぶかな。

中野商店アルバイターで人との関わりが苦手なタケオ。
これはオダギリ・ジョー、ただし暗くてイケてない時の。
もしくは松山ケンイチでもいいな。あ、むしろそのほうがいいかも。

同じくアルバイトで、小説の語り手であるヒトミ。
このキャスティングがいちばん難しいけど柴咲コウ
「女」の生々しさや湿度を感じさせない役づくりができ、
ベタな設定の感情表現でも彼女がやると嫌味がないから。

最近、川上弘美の小説を初めて数冊読んだ。
「蛇を踏む」で芥川賞を獲った時から気になっていたのに、
勝手な先入観でもっと難解で理屈っぽいと思い込んでいたのだ。
著者が美人なだけに、ヒロイン像も「女」度が高くて
ナルシスト系かと思っていたら意外や意外・・・
けっこう好きな作風であることが判明。

酔った勢いで夜道でキスをしてしまうヒトミとタケオ。
ヒトミが先に舌を少し入れると、タケオはちょっと引く気配を見せる。
するとヒトミは「あ、ごめん」と言うのだ。
部屋にやってきたタケオに
「おれ、ちょっとセックスとか苦手なんす。すいません」と
逃げるように帰られると、
~腹をたてるのがいいんだか、悲しむべきなのか、笑えばいいのか
全然わからなかった~とヒトミ。

こういうヒロインを書ける女性作家って
なんとなく信用できるというか、理屈抜きで好感が持てる。

'09 5 ★★★★★

※古道具屋が舞台でアルバイトの若者が語り手という別の小説を最近読んだ記憶が・・・
  男性作家だったような気がするけど思い出せない。
  レビュー書かなくても記録しとくべきですね。
[PR]

by gloria-x | 2009-05-17 12:37 | ブックレビュー