実録・連合赤軍 あさま山荘への道程
「よど号ハイジャック事件」も同時代の記憶としてセットになっているが、
実際どういう事件だったのかまったく知らなかった。
大学紛争や学生運動が盛んだったことは
ぼんやりとだが時代の空気として感じていて、子供心にも
「わたしも大学生になったらデモとかしなきゃいけないのかなぁ、イヤだなー」と
納得いかないものを感じていた。
テーマ的に苦手だし、なんと191分!
それなのに不思議とダレることなく一気に観てしまった。
本筋に入る前に当時の時代背景や、連合赤軍の成り立ち、
メンバーの背景などをていねいにレクチャーしてくれるので
今まで漠然としか知らなかった諸々が初めて頭に入った感じ。
山小屋に男女十数人が雑魚寝で、風呂なし、着替えなし。
たぶん顔も洗わず歯も磨いてないはず・・・
途中、ドラム缶の入浴シーンがあるけど、
野外でシャワーや水道もなく、全員使い回しのお湯。
夜は夜で革命だの共産化だの難しい話をツバ飛ばして語り合う。
もう画面からプンプン「臭そうー!」だし
生まれつき集団行動が苦手なわたしは頭クラクラ・・・
しょせん戦う対象が不明な訓練なので煮詰まってきて、
指導者の森恒夫と永田洋子による
「総括」という名目の凄惨なリンチが繰り広げられる。
延々繰り返される「総括」シーンはほんとにヘビー。
底意地の悪そうなキツネ目で他人のアラ探しをしては糾弾するのだ。
頭は良くて完全に理論武装できるものだから誰も反論できない。
坂井真紀演じる可愛いコちゃんタイプの遠山が目の敵にされ、
化粧してる、髪を伸ばしてる、服を着替えた、指輪してる、から始まり、
男に媚びている、革命家の意識が皆無だと責められて
「総括しろ!」と自分の顔をボコボコに殴ることを強制される。
この永田、他人の恋愛関係や同性が女っぽくあることに
いちいち過剰に反応するので
「男に縁のない欲求不満ブスのひがみ」かと思いきや
坂口から森に乗り換え、ヤルことはちゃんとヤッてるからびっくり!
「革命を達成するためにはわたしが森クンと一緒になるのが必然」とか言いつつ
突然「女」の顔になって、坂口に
「あなたのことは好きなのよ」とか言うのである。あーやだやだ!
森恒夫は当初デモから脱走したヘタレのくせに、
四六時中怒鳴りちらし、他人を攻撃することで
指導者としての座にしがみついているだけ。
吠える犬は弱い、の見本みたいな男である。
セックスも下手そう(勝手なイメージだけど)
そんな2人でも変なカリスマ性はあったのだろうか?
全員が心の中で「エラそうに言う自分たちはどうなんだよ?」
「自己批判とか総括とか責められてもどうすりゃいいんだよ」
「完全に方向性間違ってるよなー」と思ってるのが明白なのに、
誰もブレーキかけられなかったのが怖い。
この映画を観るまで、この山荘占拠こそがメインで
全員が立てこもってリンチもここで行われたと思っていたけど、
実際、あさま山荘占拠は終焉で偶然の産物だったのね。
主要メンバーのその後もテロップで紹介されるけど、
山小屋にいた赤ちゃんがその後どうなったのか気になる。
3億円強奪事件を描いた「初恋」にも感じたけど
昔の大学生ってほんとにこんな難しいこと
考えたり議論したりしてたんですかねぇ。
正直しんどい映画だし、後味もよくないけど、
大きな収穫あり!
坂口を演じたARATAの顔、すっごく好み♪
「ピンポン」でちょっと気にはなってたけど、
あの時はまだ様子見状態だった。
こんなに本格的な役者になっていたなんて!
今後要チェックである。
同じ事件を警察サイドから描いた「突入せよ!あさま山荘」も見ごたえあったが、
連合赤軍サイドから描いた、似た映画を観たことある規視感が・・・
「光の雨」だったのかな?
'09 5 23 WOWOW ★★★★☆
監督:若松孝二
出演:坂井真紀、ARATA、並木愛枝、伴杏里
by gloria-x | 2009-05-26 18:15 | 映画レビュー